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「ヒルドイドが美容にいい」は本当!?成分や効果は?~化粧品開発の視点から~

皮膚の治療薬として皮膚科などで処方されている、血行促進・皮膚保湿剤ヒルドイドローションやクリーム。

本来は薬であるはずのヒルドイドが「美容にいい」とSNSや口コミで広がったことにより、2014年あたりから皮膚科などの医療機関で、美容目的と思われる処方が増大しているとの報告が日本皮膚科学会からありました。

同学会では適正処方に努めるよう呼びかけています。

また、対策として保湿剤のみの処方への保険適用を外すなどさまざまな声が上がりましたが、現在、厚生労働省は「美容など、治療以外の目的のものは保険対象外となることを明確化する」として、処方の制限などはおこなわれないこととなっています。

色々話題のヒルドイド……本当に肌にいいのか、ちょっとお話ししたいと思います。

ヒルドイドに含まれる成分って??

ヒルドイドに含まれる主成分はヘパリン類似物質と呼ばれる酸性ムコ多糖類(動物性の粘性物質)の一種で、化粧品の成分としてはポピュラーなヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸の仲間といえます。

抗炎症作用や血流増加作用、抗凝固作用(血液を固まりにくくする作用)などがあるとされ、ケロイドなどの治療や予防などに処方されています。

「え、美容効果は?」

と思われるかもしれませんが、ヘパリン類似物質には「シミを薄くする」「シワを消す」「毛穴を目立たなくする」などの効果はありません。

保湿効果はありますが、多糖類として肌の表面上で保湿成分として働く目的なら、前述のヒアルロン酸やプロテオグリカンといった保湿成分があります。

加齢によるしわに対しては、薬用化粧品に「しわを改善する」効果が認められているものが出てきて注目を集めていますし、『乾燥による小じわを目立たなくする』という効果は、既に化粧品の効果として認められています。

このようなスキンケアアイテムでも十分効果を得られるのではないでしょうか。

「でも医薬品だから、より安全で肌にやさしいのでは?」

と思われた方!

ではヒルドイドクリームに含まれるヘパリン類似性分以外の成分を検証してみたいと思います!

成分名:グリセリン
特徴:多価アルコールで吸水性が高いことから保湿剤として、多くの化粧品に使用されるポピュラーな原料

成分名:ステアリン酸
特徴:乳化剤としてクリームや乳液などの化粧品に用いられる

成分名:水酸化カリウム
特徴:脂肪酸を中和する乳化剤として用いられる

成分名:白色ワセリン(ワセリン)
特徴:石油を原料とした半固形の油脂性基剤。水分の蒸散を防ぐので、クリームやリップケア製に用いられる

成分名:ラノリンアルコール
特徴:乳化剤・保水剤として用いられているが、ジャパニーズスタンダードアレルゲン25種の一つに含まれ、皮膚感作が起こる可能性がある

成分名:セトステアリルアルコール
特徴:乳化安定剤、増粘剤などとして用いられる

成分名:セトステアリルアルコール・セトステアリル硫酸ナトリウム混合物
特徴:乳化安定剤

成分名:ミリスチルアルコール
特徴:乳化安定剤

成分名:パラオキシ安息香酸メチル
特徴:防腐剤。メチルパラベンのこと

成分名:パラオキシ安息香酸プロピル
特徴:防腐剤。プロピルパラベンのこと

成分名:イソプロパノール
特徴:溶剤として用いられる

ヒルドイドは安全??

ヒルドイドは、医薬品として医師から処方されるもの。

そのため、副作用が起こる可能性があります。

製造販売元が添付している文書では、皮膚刺激感や紫斑が頻度不明で、そして0.1~5%未満で皮膚炎、そう痒、発赤、発疹、潮紅などが起こるとされています。

ヒルドイドクリームの場合、0.93%に副作用が認められており、副作用の頻度として高い数値ではありませんが、留意しておく必要があります。

また、ラノリンアルコールですが、こちらは皮膚への感作性が懸念されることから、化粧品の処方では、最近はあまり使われていません。

日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会パッチテスト試薬協同研究委員会が選定する、ジャパニーズスタンダートアレルゲンという、日本での陽性率の高いアレルゲン25種の抗原試薬にも含まれています。

他の成分も、ほぼ化粧品に用いられているものと同じ。

医薬品だからといって「肌によい」「肌にやさしい」というわけではないとお分かりいただけるかと思います。

美肌であることは多くの女性にとって、大切なこと。

しかし、美容効果が高いという噂に踊らされ多くの人が過剰に処方してもらうことで、国全体の医療費の負担が大きくなり、本当に必要な人にまで処方が制限される可能性が出てしまうというのは、やはり大きな問題があるといえます。

保湿効果という意味で考えれば、「ヒルドイドじゃないとダメ」なんてことは考えられず、自分の肌に合った化粧品できちんとケアすることが、肌にとっても、国の財政にとっても最も良いのではないでしょうか?

そもそも、美容目的での健康保険の利用は認められていません。しかし極端な例だと、子どもに処方されたヒルドイドを、親が使ってしまうという例もあるそうです。

キレイになりたい気持ちは誰しも持っていると思います。

「医薬品だから良いはず!」「ネットでみんなが良いと言っていた!」という思い込みではなく、何が自分の肌にとって最も合うものか、しっかり判断する目を養いたいですね。

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

※この記事は、過去ブログに掲載した記事を加筆・修正のうえ再掲したものです。

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