ちゃんと寝れてる?睡眠が取れていると思ってない?良質な睡眠のために日常生活でできる工夫をディオクリニック理事長の藤井先生に伺いました!

「週末に寝だめしてる」「睡眠時間は十分なはず」…なのに疲れが取れていないという方はいませんか?
実は、それでは「きちんと睡眠が取れている」とはいえないのです。
今回は、睡眠について医療法人理事長でディオクリニックの運営に携わる藤井崇博先生にお話を伺いました。

寝だめはできない!睡眠不足の危険性

健康的な睡眠とは眠った時間とぐっすり眠れたかどうかの睡眠の質が重要になってきます。
睡眠時間に関しては、約11万人を対象として10年間追跡したJACC Studyでは平日の睡眠時間が7時間程度の人がもっとも死亡率が低いという結果になりました。
睡眠時間は短かすぎても、長すぎてもダメで、極端に短かったり長かったりすると、死亡するリスクが高まってしまうという報告もされています。
普段は寝不足気味で過ごしており、休日に長めに睡眠することで睡眠時間を補えると思う方もいらっしゃるかと思いますが、睡眠不足は一気に解消できたり、貯めることはできないため毎日の睡眠時間が重要になってきます。

しっかり眠っていればOK…ではない。睡眠の質は大丈夫?

では次に睡眠の質に関してですが、ぐっすり眠れている良質な睡眠には「レム睡眠」という眠りと「ノンレム睡眠」という眠りが交互に現れているとされています。
レム睡眠とは比較的浅い眠りの段階のことで、このレム睡眠中に夢を見る人が多いです。
ノンレム睡眠は眠りが深い状態のことです。
良く眠れている人の睡眠は、一気にノンレム睡眠の深い眠りから始まります。
就寝後1時間ほどたつと、だんだん眠りが浅くなってレム睡眠へと移行します。
そして、再びノンレム睡眠に移行して深い眠りに入った後、眠りが浅くなってレム睡眠に移行します。このような約90分の周期が一晩に3〜5回程度繰り返されることが良質な睡眠のリズムになります。
このリズムが乱れると、すっきり起きることができなくなったり、朝になっても疲れが残ってぼーっとしたりしてしまいます。

良質な睡眠のために日常生活でできる工夫

睡眠の質を上げるために、今日からできる工夫についてお話しします。

●寝る直前にPCやスマホなどブルーライトをみない
また、ベッドの中に入ったらスマホやパソコン、テレビなどブルーライトを発する機器を使用することは避けましょう。
ブルーライトを浴びると、メラトニンと呼ばれる睡眠を誘発するホルモンの分泌が抑制されます。
つまりブルーライトの影響で、夜間であるにも関わらず脳は昼間だと錯覚してしまい、眠りにつきにくくなってしまいます。
どうしてもスマホが手放せないという方は、電源を切ってどこかにしまうとか、物理的に距離を離すことをおすすめします。
ベッドはあくまでも眠るための場所であると考え、それ以外のことは極力しないように注意しましょう。
できれば就寝前は最低1時間はブルーライトを避けて頂きたいです。

●起床後に日光を浴びる

良い睡眠は朝につくられると言っても過言ではありません。
日光を浴びると眠気が覚めることは実感される方も多いかと思いますが、朝の日光は眠気を覚ます効果だけではなく、夜の眠りにも関連しています。
ホルモン分泌を調整している体内時計は概日リズムといわれ、25時間周期で動いています。1日は24時間なので、実は、1日1時間のずれが日々生じているのです。
この1時間のズレを調整するのが日光です。
毎朝日光を浴びると、睡眠・覚醒のリズムが整います。
睡眠に関するホルモンとしてはセロトニンが睡眠を誘発するメラトニンの原料となり、夜になるとメラトニンに変換されます。
セロトニンの分泌は日光によって増加するので、朝に日光を浴びてセロトニンを分泌させることが、夜の眠りには重要なのです。
日照時間は、30分くらいは必要ですが、日光は必ずしも外で浴びる必要はなく、基本的には朝にカーテンを開けた状態で、明るいリビングルームなどで生活をするので十分です。
睡眠とは関係ないですが、メラトニンが不足すると糖尿病の発症率が高くなるという研究も報告されています。

●朝食は和食、ヨーグルトがおすすめ
日光を浴びるところでも出てきたホルモンであるセロトニンの原料は、トリプトファンという栄養素です。
トリプトファンは、大豆に多く含まれています。
他にも糖質やビタミンB6も摂取できると睡眠には望ましいので、焼き鮭、みそ汁、納豆、白米といった和食は、良質な睡眠を取るために理想的な朝食です。
トリプトファンはヨーグルトにも多く含まれており、ヨーグルトを食べることも良質な睡眠につながります。

●夕食は眠る3時間前までには食べ終わる
食後は胃腸が活性化するので、夕食後3時間以内に眠ると胃腸は十分な休息をとることができません。
就寝中の内臓を休めるためには、夕食は就寝の3時間前までに済ませるようにしましょう。

●入浴の温度は38℃前後、就寝の60分~90分前には済ませる
就寝前の入浴は良質な睡眠をとるために適しています。
お湯の温度を40度以上に設定している人も多いと思いますが、お湯が熱すぎると身体に負担をかけてしまう可能性が高まるため、睡眠の質を高めるという点からはおすすめしません。
38℃前後の少しぬるい湯船に20分程度ゆっくり浸かることをおすすめします。
また、入浴直後は体が熱を持った状態になっており、眠りにつきにくい状態になっていますので、入浴は就寝の60分〜90分前には済ませるようにしましょう。

●カフェイン摂取は避ける

就寝前には睡眠を妨げるコーヒーなどのカフェイン飲料が入った飲み物は避けるべきです。
温かい飲み物であれば、生姜湯やホットミルク、カモミールティーなどのノンカフェインのハーブティーが就寝前は適しています。
また、白湯や甘酒などもおすすめです。

●アルコール摂取はほどほどに
アルコールに関しては、睡眠直前に飲むようないわゆる「寝酒」としての摂取はおすすめできないです。
寝酒をすると入眠はしやすくなる方もいるとは思いますが、睡眠中は時間が経つにつれて眠りが浅くなり睡眠の質が下がります。
アルコールの摂取も食事と同じように就寝の3時間前までに済ませるようにしましょう。

●落ち着く音楽を聞く
精神的な落ち着きを生み出すために音楽は有効です。
副交感神経を活性化するヒーリングミュージックは特に効果を期待できます。
海の音や雨の音、森林の自然音、クラシックなど自分が落ち着いて聴いていられる音楽を選びましょう。

●適切な寝具を選ぶ
良質な睡眠のためには、寝具を見直すことも大事です。
朝起きたときに腰や首の痛みを感じることが多い場合は、枕の高さやマットレスの硬さが自分の体に合っていないことも考えられます。
寝具を変えるだけで睡眠の質を高められる可能性がありますので、ぜひ一度検討してみてください。

こちらで紹介した、日常生活での質の良い睡眠を得る工夫を実践しても日中の眠気を感じる場合は、睡眠時無呼吸症候群など睡眠を障害する病気が原因となっている場合があります。
自分一人ではなかなか気づきにくいので、ご家族やパートナーさんに夜間就寝時に呼吸が止まっていないかを確認するとともに、早めの専門医受診を検討していただければと思います。
睡眠時無呼吸症候群は、日中の眠気などの症状はもちろん心配ではありますが、脳、心血管系の病気にもかかりやすいことがわかっており、早期発見、早期治療が大切になってきます。
きちんと眠っているはずなのに疲れが取れない、いびきがきになる、何度も覚醒してしまうなど、睡眠に関する悩みがある方は、一度かかりつけ医に相談してみてください。

執筆者

藤井崇博先生

ディオクリニックを運営する医療法人理事長の藤井崇博と申します。
専門領域は循環器内科で心臓領域を専門としております。
研修医から2021年までの約10年間大学病院、関連病院で臨床、研究、教育に従事させて頂き、循環器内科専門医、循環器内科領域での医学博士号を取得しております。
現在も循環器疾患を含め外来での診療は継続させて頂いております。
循環器内科医として様々な患者さんの診察に日々従事する中で、何よりも大事なのは未病、医学的には一次予防と呼ばれる未然に病気になるのを予防しようとする意識が大事だと常々思います。
最近では対面でお話出来ないことも多いので、SNSやその他コラムなどで健康に有益な情報の発信に力を入れております。

ディオクリニック
https://dioclinic.jp/

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