「骨美人」と「脳美人」になるためには?若いうちから「これだけはやっておけ!」を整形外科医の歌島先生に伺いました!

その道のプロだからこそできるキレイへのアドバイス。
今回は、整形外科医の歌島先生に、将来のため若いうちから「これだけはやっておいてほしい」という、ポイントについてお話を伺いました。

整形外科医として女性が若いうちから「これだけはやっておけ!」っていう、将来後悔しないための大切なポイントをお伝えいたします。
特に身体の内側である、骨と脳の若々しさを保つために大事なポイントを解説します。

内側の若々しさ1「骨美人」

内側の若々しさの1つめとして、「骨」を取りあげたいと思います。
骨が若々しい人を「骨美人」と定義すると、その逆は病的な骨になります。その代表が「骨粗鬆症」です。この骨粗鬆症は女性には切っても切り離せないくらいに関係性が深いものなのです。

骨密度は20歳代でピークを迎える

日本人女性を対象にした骨密度の研究1)では、女性は18歳から29歳で骨密度が最も高いピーク値となり、40歳くらいまで維持され、閉経が近づくにつれてかなり急速に低下していきます。
閉経前からの低下は女性ホルモンとの関連で誰しもに起こることですから、まず若いときの骨密度のピークをいかに高くするか、もしくは低下させないかということが将来の骨粗鬆症予防の1つのポイントといわれています。

骨密度維持にはBMIと運動習慣、活動総エネルギーが重要

若いうちに何をしていれば、骨密度にいい影響があるかというと、2007年の調査研究では2)最も重要なのはBMIだということです。
BMI=body mass indexですね。これが低いと痩せすぎ、高いと太りすぎということになるわけですが、骨密度の観点からすると、BMIは20.8以上が望ましいということになります。
逆にいうと、BMIが20.8未満の痩せ気味、痩せすぎの方は平均より骨密度が下がるリスクがあるってことなんです。
このBMI20.8っていうのは、日本人女性の平均身長である158cmの方ですと、体重が52kgに相当します。内側から健康になるには体重もある程度必要ということにもなりますよね。
BMIが重要な理由としては、痩せすぎると女性ホルモンの異常が起こりやすい(無月経症など)ことや、体重が軽いことによる骨への刺激不足などが考えられています。
一方でBMI20.8未満だったとしても、運動習慣があったり、活動量の多い仕事などによって1日のエネルギー消費量が多い人は骨密度も保たれやすい傾向があることも報告されています。
そう考えると「骨美人」への道は「よく食べ、よく動く」というとってもシンプルな結論に至ります。

内側の若々しさ2「脳美人」

内側の若々しさの2つめが「脳」です。
美しさを規定するのは外面の美しさと内面の美しさといわれますが、内面っていうのは「心」」ですよね。その「心」は医学的には「脳」です。
そして、その「脳」が将来的に徐々に衰えていった結果、起こりうるのが「認知症」という病気です。
この認知症を予防し、脳の働きの大半を占める「認知機能」を高く維持するために必要なのは実は「筋力」なんです。

筋力が強いと61%も認知症リスク低下

2009年の研究ですが3)全身の筋力を数値化して、認知症リスクとの関連を調べた研究があります。
結果、筋力が高い人は低い人に比べて認知症発症リスクが61%も低かったと報告しています。61%はなかなかの衝撃ですよね。

握力チェックしてみましょう

全身の筋力っていっても、ジムに行ってマシーンで測るとか、結構大変ですよね。
でも、簡単に数値化できて興味深い「力(ちから)」があるんです。それが「握力」です。握力と全身筋力っていうのは関係性が深いことがわかっていて、さらに握力と認知症リスクの関係も研究されているんです。2022年の研究3)では、握力の低下は将来の認知症・脳機能低下のリスクだと報告されています。
注意したいのは握力は全身の筋力の指標になるという意味で有用なのであって、握力だけ鍛えた場合の認知症予防効果は不明だということです。おそらくメカニズムを考えても効果は薄いと思われますので、全身を鍛える一環で握力「も」鍛えるのが良いと考えられます。
昔は学校の体力テストなどで測定することがあったり、病院で測定したりしていた握力ですが、今は握力計も大手通販サイトで2000~3000円で購入できるので、誰でもカンタンに測ることができます。
日本人女性の平均はだいたい27~28kgなのでそれを上回ることを目標に筋肉を鍛えていくのも良いのではないでしょうか。

結論「若いうちから筋トレしよう!」

ここまで「骨美人」と「脳美人」という言葉を使って、将来の骨粗鬆症と認知症の予防策について考えてきました。
結果としては、「骨美人」になるにはある程度の体重と1日のエネルギー消費量が高いことがポイント、「脳美人」になるには筋力が重要ということになります。
となると、結論、筋トレ習慣を中心とした運動習慣で筋肉量を増やしていくことで、「骨美人」にも「脳美人」にもなれそうってことになりますよね。
筋トレを「美しい体型」をつくるためにやっている人もおられると思いますが、実はそういう「外面」だけでなく、骨や脳という「内面」にも効果が期待できるということを知ると、若いうちからやっておこうというモチベーションにもなりますね。

参考文献:
1) Seiya Orito et al. J Bone Miner Metab. 2009
Age-related distribution of bone and skeletal parameters in 1,322 Japanese young women
2) Yuko Miyabara et al. J Bone Miner Metab. 2007
Effect of physical activity and nutrition on bone mineral density in young Japanese women
3) Patricia A Boyle et al. Arch Neurol. 2009
Association of muscle strength with the risk of Alzheimer disease and the rate of cognitive decline in community-dwelling older persons
4) Kate A. Duchowny et al. JAMA Network Open. 2022
Associations Between Handgrip Strength and Dementia Risk, Cognition, and Neuroimaging Outcomes in the UK Biobank Cohort Study

[執筆者]

歌島大輔先生
整形外科医
フリーランス整形外科医として、常に磨き上げ続けている肩関節鏡手術スキルを駆使し、五十肩・腱板断裂などを対象に治療をおこなっている。
また、情報発信ドクターとしての顔も持ち、「正しい医学情報をわかりやすく」をモットーに、情報発信・オンライン教育事業を積極的に展開している。

すごいエビデンス治療 | 整形外科医 歌島大輔
https://www.youtube.com/@d.utashima

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