【後編】女性特有の悩みであるPMS改善のためにできるケアは?森女性クリニック 院長、森先生に伺いました!

女性の悩みのひとつPMS。
改善するために自分でできるケアはあるのか、病院に行ったらどのような治療を受けるのか?
今回は森女性クリニック 院長の森久仁子先生にお話を伺いました。

自分でできるPMSの改善方法は


PMSの症状に悩んだら、まずはセルフケアをおこないましょう。
症状を軽くするための4つのセルフケアについて説明します。
1)症状日記をつける
日々の症状を記録することで、症状が現れるタイミングや症状やその強弱がわかるようになり、体調が悪くなる時期が予測できるようになります。
体調が悪くなる時期に仕事や家事を減らすなど、スケジュールの工夫が可能です。
2)食生活を改善する
コーヒーや紅茶などカフェインを多く含むもの、糖分の多いもの、アルコールの摂取量を減らしてみましょう。
また、たばこを減らすと、症状が改善する場合があります。
3)生活を改善する
適度な定期的な運動や、規則正しい睡眠、ストレスの軽減が症状を緩和させるといわれています。
マッサージやアロマテラピーを取り入れて、リラックスできる方法を見つけましょう。
4)ビタミンやミネラル、西洋ハーブを取り入れる
カルシウム、ビタミンB6、マグネシウムなどは症状を緩和させるため、食事やサプリメントで取り入れるとよいでしょう。
PMSに効果があるといわれる代表的な西洋ハーブには、ホルモンバランスにかかわる不調を改善し、イライラや抑うつ気分・頭痛などの月経前症候群・月経と関連する乳房痛・月経痛を軽減する効果があるチェストベリーや、気分の落ち込みや不安を軽減する効果があるセントジョーンズワートなどがあります。

病院で処方される薬剤や治療は

症状がつらいときやセルフケアで改善が見られないときは、受診を検討してください。
どのような薬や治療があるのかご説明します。
1)鎮痛剤
頭痛・腹痛などの痛みを伴う場合は、鎮痛剤であるアセトアミノフェン・ロキソニン・ボルタレンを用います。
2)利尿剤
むくみや胸が張る症状に対して、利尿薬であるスピロノラクトンを用います。
3)SSRI
不安感・意欲低下・イライラなどの精神症状に対して用い、欧米ではPMSやPMDDの第一選択薬です。
SSRIはうつ病の治療薬ですが、うつ病で使用する場合よりも、少ない量で効果が出るといわれています。
4)漢方薬
個別の体調にあわせて、どの漢方薬にするかを決定します。
代表的な漢方には、「婦人科三大処方」と呼ばれる桂枝茯苓丸・加味逍遙散・当帰芍薬散があります。
精神症状が主な場合は、抑肝散・半夏厚朴湯・柴胡加竜骨牡蛎湯などを用います。
5)ホルモン治療
ピルはエストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)という二種類の女性ホルモンを配合した薬であり、薬剤によりエストロゲンの量やプロゲステロンの種類が異なります。
LEP(保険診療で処方されるピルで、月経痛緩和目的)・OC(自費診療で処方されるピルで、避妊目的)ともに、排卵を抑えることで、月経に伴う女性ホルモンの変動、それに伴うPMSの症状を軽減させます。
腹痛・乳房痛・むくみなどの改善効果が主で、精神症状の改善は少ないといわれていますが、スピロノラクトン誘導体であるドロスピレノンというプロゲステロンを含むLEP(ヤーズ配合錠・ドロエチ・ヤーズフレックス)は、PMDDを改善することが確認されています。
しかし、現在のところLEPは「月経困難症」の病名があれば保険適応ですが、「PMS」や「PMDD」だけでは保険適応になりません。
月経痛を伴うPMS・PMDD場合は、保険適応で処方可能です。

PMSの症状は多岐にわたり、一番つらいと感じる症状もそれぞれ異なります。
PMSの症状だけでなく、月経痛や月経不順の有無・現在妊娠を希望しているかどうかなども含めて、治療の薬剤が決まります。
複数の薬を同時に使用するケースもありますし、精神症状が強くSSRIの効果が低い場合は、心療内科に紹介されるケースもあります。
セルフケアで改善せず、日常生活に影響を与える症状があれば、産婦人科を受診しましょう。
現在の体調・仕事環境・妊娠などの将来設計などを含め、産婦人科医と十分に相談して治療することで、毎日を快適に過ごせるようにしましょう。

[執筆者]

森久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士
大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局。
同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。
プライバシーに配慮したクリニックで、産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。

森女性クリニック
https://www.mori-ladies.com/

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