【後編】気になる!顎トラブルにかかる治療法やコストについてパレスサイドビル歯科院長 石岡先生に詳しいお話を伺いました。
実は現代の女性に多い悩みのひとつ「顎関節症」。
3回にわたり、パレスサイドビル歯科の院長 石岡麻美子先生に詳しいお話を伺いました。
第3回目の今回は、顎関節症の治療内容や気になるコストについてご説明いただきます。
痛みが強いなど生活に支障が出るときはすぐに治療を
1,薬物療法
痛みが強い場合は、鎮痛剤を服用したり、筋肉の緊張をほぐす作用のある筋弛緩剤を歯科医院にて処方されることもあります。
保険治療適応されます。
日本顎関節学会のガイドラインでの鎮痛剤の使用方法は、痛みがある時に飲むのではなく、決まった時間に鎮痛剤を服用することをお勧めしています。
2,理学療法
物理療法(顎関節周囲の筋肉をほぐす)と運動療法(顎関節を動かす機能を回復する)があります。
顎関節症では組み合わせて症状の緩和を行うことが多いです。
こちらも、保険治療適応されます。
<物理療法>
・寒冷療法:顎関節症になったばかりで痛みが強い場合に行います。冷湿布などで冷やし、炎症を抑えたりします。
・温熱療法:温湿布、蒸しタオルなどを用い、痛みのある部分の筋肉を温めることで、筋肉の血流を改善し、筋肉の緊張をほぐしていきます。入浴をしながら顎関節部周囲の筋肉をほぐすことも効果的です。
・電気刺激:マイオモニターや低周波治療器など電気を通す機器を用いて筋肉をほぐす療法です。
<運動療法>
顎関節症に対しての運動療法は、筋肉や関節をよく使うことで、開口訓練などを行い、運動の機能を維持し改善する治療方法です。顎関節症の初期の痛みが強い時には行いません。インターネットで紹介されている方法もありますが、歯科大学病院や顎関節症専門医に診てもらい、きちんと指導を受けることをお勧めいたします。
3,マウスピース療法(スプリント療法)
顎関節症に対して、歯科で広く行われている治療がマウスピースを用いた治療です。
顎関節症治療用のマウスピースはスプリントと呼びます。
スプリントは、型取りをして装置をつくり、歯を覆うようにしてはめ込む透明な装置です。
スプリントは大きく分けて2種類あります。
適切なかみ合わせを行う目的のものと(上の歯に装着)、下顎頭や関節円盤を正しい位置に戻す目的のもの(下の歯に装着)です。
顎関節症の症状や歯の状態に応じて適切な種類のスプリントを作製します。
スプリント治療のみでなく、日常生活の改善や運動療法も一緒に行われることが多いです。
顎関節症のスプリントは基本的に保険診療でおこなうことが多いですが、自費治療でスプリントを作製する歯科医院もあります。
保険診療の場合、スプリント作製費は型取りから完成まで、3割負担で1万円あれば作製できます。
歯並びの悪さが顎関節に悪い影響を及ぼしていると思われる場合、矯正治療も治療の選択のひとつとなります。この場合、矯正治療は自費治療となります。矯正治療になると、100万円前後かかることもあります。
4,ボツリヌス療法(ボトックス療法)
歯科医院で行われるボトックス療法は、ボツリヌス菌が産生するボツリヌストキシンと呼ばれる毒素を取り除いて抽出された薬を、咀嚼筋の筋肉内に注射する治療法です。
筋肉に直接注入することでその筋肉がゆるみ、緊張や痙攣がおさまることにより、顎関節症や食いしばりの治療のひとつとして注目されています。
また一緒に小顔効果もあるということでも世間ではいわれています。
ただし、妊娠中の方、授乳中の方、妊娠を望んでいる方は禁忌です。
そして、効果は半永久的ではありませんし、保険適応外の治療です。
歯科医院により値段は違いますが、ジェネリックか先発品のどちらかを使用するかにあたり価格は異なります(1.5万~6万円)。
しっかり説明を聞いてから、ボトックス療法を受けられることをお勧めいたします。
5,外科的療法(手術的治療)
重度の顎関節症や、保存的治療では効果がみられない場合には、外科的療法を選択することもあります。
ただ、保存療法だけで改善する場合が多く、切ったりする手術を必要とする割合は少ないのが現状です。
一般の歯科医院ではおこなうことが難しく、口腔外科がある大学病院でおこないます。
外科的療法には、関節内治療、内視鏡治療、外切開などがあります。
保険治療適応です。
顎関節症は、口の外の疾患ですが、歯科分野です。
気になることがありましたら、遠慮なくかかりつけ歯科医にご相談ください。
顎関節症の治療のゴールは、「痛みなく」「十分に口が開き」、いくつになっても美味しく食事が取れることです。
いくつになっても女性も男性もいきいきと健康に、そして元気に毎日を送りたいものです。
[執筆者]
石岡麻美子
歯科医師
パレスサイドビル歯科 院長
皇居に近い立地で、東西線「竹橋駅」直結、毎日新聞社本社パレスサイドビル内にある、早稲田医学院歯科衛生士専門学校直営のパレスサイドビル歯科の女性院長。
パレスサイドビルおよびその周囲で働くビジネスマンの方々の歯の健康維持に尽力している。
長崎大学歯学部卒業。
中国北京にて4年間駐在経験あり。
日本歯科医師免許の他に中国北京外国人歯科医師免許も取得。
日本語だけでなく、中国語でも診療可能。
パレスサイドビル歯科 ホームページ
https://paleceside-dental.com/