気になるけど相談できない・・おりものの悩みについて沢岻美奈子女性医療クリニック院長沢岻先生に伺いました。
女性にとって、ちょっと煩わしく感じることも多いおりもの。
においや質感がいつもと変わり気になっても、なかなか周りには相談しにくいですよね・・・。
でも、実はおりものチェックは健康管理に有用なんです。
今回は、沢岻美奈子女性医療クリニック 院長の沢岻美奈子先生にお話を伺いました。
小学生からご高齢になってもある、おりものの悩み
更年期を中心として幅広い年代の女性の健康管理をおこなう当院には、初潮を迎える前の小学生の女の子から、100歳近くの元気なセンテナリアンのご婦人まで、さまざまな女性ならではのお悩み事の方が受診されます。
最近は8歳くらいで初潮を迎える子もいますが「まだ初潮が来ていないのに、おりものが出てきたんですけど大丈夫ですか?」とおっしゃる若い母娘連れの方から、「閉経後は出血もおりものも無くなるもんだと聞いていたけど、私は病気ですか?」と恥ずかしそうにおっしゃる80代のご婦人まで実にさまざまです。
おりものって何?あったほうが良いの?どんな色や匂いが普通?痒みとおりものって関係ありますか?など、実際に受診される患者さんからも多く質問される内容に関してご説明しますね。
“おりもの”ってどんなもの?どんな役割があるの??
女性の身体の中、子宮や膣、汗腺や分泌腺から“おりてくる”ものが、おりものです。
子宮には赤ちゃんを育てる子宮体部の内膜と、膣の外からばい菌が入って来ないようにバリアとなる分泌物をつくり出す頸管のある頸部があります。
ですからおりものの症状でもその原因は色々あります。
若い方のおりものは、痒みを起こすカンジダ膣炎のカッテージチーズのようなものから、性行為感染症の淋菌感染では嫌なニオイで黄色っぽいものがあります。
高齢の方の水っぽいおりものでは、子宮体癌が見つかった方もいます。
このようなおりものがあったときは、なるべく早めに受診することをおすすめします。
おりものって、煩わしいなぁと思っていますか?
健康のためには“しっかり食べて、よく寝て、ちゃんと出す”ことを心がけたいですよね。
身体から出てくるもののひとつであるおりものも、体調のバロメーターという訳です。
実際に、「おりものがいつもと違う」と受診される方の検査をすると、肺炎桿菌や大腸菌が出ることもあります。
「肺炎を起こす菌が膣にいても大丈夫ですか?」
「大腸菌って腸の中にいる菌なのに膣にいて大丈夫ですか?」
って心配になったり、不思議に思ったりされると思います。
実は、腸内のように膣の中には多様な菌がいます。
その中のひとつ、乳酸菌の一種である「デーデルライン桿菌」は膣内を酸性に保ち、細菌の侵入を防いでくれる善玉菌です。
バランスの整った食生活や、十分な睡眠、疲労やストレスをしっかりとコントロールできていれば、善玉菌であるデーデルライン桿菌が膣を守ってくれます。
どんなにおいや見た目だと安心?
女性ホルモンが波のように毎月の月経周期で変化するように、おりものも月経周期で変化しています。
おりものの量はエストロゲンホルモンの量にほぼ比例していて、個人差が大きいものでもありますが、排卵期に最も多くなります。
健康的なおりものは、透明から乳白色で、乾燥すると黄色みがかります。
量の増える排卵期には、卵の白身の様な透明でとろみのある水っぽい状態に変化することで、受精しやすさ、すなわちアルカリ性の精子が子宮の中にスムーズに入りやすくなる手助けをしています。
膣内の善玉菌であるデーデルライン桿菌は乳酸を分泌するので、おりものは酸っぱいニオイがします。
ちょっと酸っぱいニオイは健康の証ですね。
月経の前にはニオイが強くなる傾向もありますが、やはり個人差が大きいもので、診察する側としては大したにおいではないなと感じていても、ご本人にとってはとても不快感が強いこともあります。
最近では“腸活”という言葉もありますが、細菌と共生して生きている私たちの体中の九割の菌は大腸内にいます。
大腸の中を良い状態、健康的なお通じがあることが、膣内環境にも多いに関係しています。
腸内環境を整えることも大切なのです。
デリケートゾーンはどうやってケアするの?
月経のある年代のかたのデリケートゾーンは、女性ホルモンのおかげで適度なうるおいを保っています。
更年期以降はホルモン低下に伴って全身の皮膚が乾燥傾向になる中で、特に皮膚の薄いデリケートゾーンは乾燥傾向が強くなります。
洗い過ぎはさらなる乾燥を招くので、保湿作用のあるデリケート専用のソープをおすすめしますし、普段はただお湯で軽く流すだけで十分です。
よく聞くのが、
「痒くなったのできっと不潔が原因に違いないと、一生懸命洗っていたら、痛くなりました」
というトラブルです。
痒みを起こすカンジダ膣炎は、不潔などでなく、睡眠不足やストレスなどの抵抗力が落ちるなどが原因で起こります。
膣内洗浄も、不快な症状が強い時に利用するのは良いと思いますが、善玉菌のデーデルライン桿菌まで洗い流してしまわないように気をつけてください。
洗い過ぎは厳禁です。
基本だけど実は知らない!排泄時の拭き方や、お尻洗浄の使い方
どのトイレにも自動洗浄がついている現代では、意識せずにお尻の洗浄を機能を使っている方が多いと思います。
ここで婦人科医のリアルを。
毎日何十人も女性を診ていると、、お尻にトイレットペーパーの付着していている方の多いこと。
きっと拭き残しが気になってしまい、一生懸命拭いているのか、お尻の洗浄時の水分を拭きとるために、さらに拭いているのか。
強すぎる摩擦が刺激となるのはもちろん、ペーパーのような異物も肌への刺激になり、痒みなどを引き起こすこともあります。
強くこすったり、ゴシゴシと何度も往復させるような拭き方ではなく、デリケートゾーン周りを軽く抑え、ペーパーに水分を吸い取らせる程度の拭き方で十分ではないでしょうか。
これで、お尻へのペーパーの付着も防げると思います。
おりものやデリケートゾーンについては、なんとなく調べたり周りに聞いたりしづらくて、自分のことなのになかなか知らない、という方もいるでしょう。
女性にとって大切なことなので、正しい知識を持ってケアしたいですね。
[執筆者]
沢岻美奈子先生
沢岻美奈子女性医療クリニック 院長
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。
神戸にある沢岻美奈子女性医療クリニックの院長。
子宮がん検診や乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を数多くおこなっている。
更年期を中心にホルモンや漢方治療など多岐にわたる治療をおこなう。、
女性のヘルスリテラシー向上のため、実際の診察室の中での患者さんとのやりとりや女性医療の正しい内容をインスタグラム(375taxi)にて毎週配信している。
沢岻美奈子女性医療クリニックホームページ
https://takushiminako.com//