あなたの咬み合わせ大丈夫?気になる歯並びの原因の一つ!「歯ぎしり」についてタカラデンタルクリニック宮澤先生にお伺いしました!

上下の歯の咬み合わせや歯並びは、外観的にも口腔機能の面から考えてもとても重要です。
その重要な噛み合わせを歪めてしまう原因のひとつは「歯ぎしり」なのです。
今回は、歯ぎしりについてタカラデンタルクリニックの宮澤有理江先生にお話を伺いました。

歯ぎしりが原因で噛み合わせに影響が!ほとんどの人がしているって本当?

口腔の機能は食事(咀嚼)・飲み込み(嚥下)・発音(会話)・姿勢維持・呼吸・唾液の循環・ストレス解消(歯ぎしり)・非言語的コミュニケーション(容姿)などさまざまです。
このような口腔の機能を正常におこなうには正しい歯並び咬み合わせであることが必要です。
とりわけ「歯ぎしり」は口腔で一番力がかかるおこないで、咬み合わせと大きく関係しているのです。
朝起きたとき、顎の疲れ、首や肩のハリを感じたことはありませんか?
実は、歯ぎしりは100%誰もがしているものなのです。
最近の研究では、寝ている時に誰でも歯ぎしりをしていることが報告されています。
歯ぎしりといえば、ギリギリと音を立てるものだと思われがちですが、音がしない歯ぎしりもあります。
実は音がしないタイプの歯ぎしりをする人が多いのです。
音がする歯ぎしりは特別なものと思われることが多いのですが、すべての人がいずれかのタイプの歯ぎしりをしていることが分かっています。
そして歯ぎしりは、日常生活を送る上で必要な行為であると考えられています。
歯ぎしりには3つのタイプがあります。

クレンチング :歯を食いしばるタイプ
グライディング:歯を横にギリギリさせるタイプ
タッピング  :カチカチ噛み合わせるタイプ

このうち、音が出るのはグライディングとタッピングだといわれます。
ただし最も多いのは、音が出ない歯ぎしりなのです。

なぜ、歯ぎしりをしているのでしょうか

日常生活を送っていると、誰もが大なり小なりストレスを受け、ため込んでいきます。
そのストレスを発散し、解消するために、眠っているときに歯ぎしりをしているのです。
歯ぎしりをすることで、血液中のストレス物質であるアミロイドβが減少することが報告されています。
歯ぎしりは生理的な現象なので、止めることはできませんし、必要不可欠なストレス解消行動で、必ずしも悪いものだとはいえません。
ただしそれは「正しい歯並び」と「正しい噛み合わせ」でしている場合に限られます。
目覚めたときに顎がだるい・疲労が残っていると感じる場合は要注意です。
正しい歯並び・噛み合わせならば、歯や歯茎・顎やその周辺の筋肉に負担がかからないため、自然な目覚めをします。
しかし、朝起きたときに「顎がだるい・疲れが取れない」と感じる場合は、噛み合わせが悪いために歯ぎしりで顎や筋肉に負担がかかっていると考えられます。

悪い噛み合わせが引き起こす症状

歯並びが悪い状態で噛み合わせると、下顎の骨がゆがんだ状態になります。
その下顎の骨がゆがんだまま歯ぎしりをすると、歯や歯周、顎の筋肉、顎関節から首や肩など、広く心身にさまざまな悪影響が現れてきます。
1)歯が悪くなる
悪い歯並びで噛み合わせることで余計な負担がかかり、歯がすり減ったり、虫歯になったり、また知覚過敏になったりします。
2)歯周病になりやすくなる
歯並びが悪いとよごれが取りにくいので歯周病菌が溜まり歯肉の炎症を起こし、歯周病になるリスクが高くなります。歯周病になると、歯周病菌が血液中に流れ出し心臓や脳の動脈硬化、糖尿病また誤嚥性肺炎にかかりやすくなることがわかっています。
3)首・肩のコリ、腰痛、ひざの痛み
噛み合わせが悪い状態で歯ぎしりをすると、首や肩の筋肉に余計な負担がかかります。
そのため、首や肩のコリが生じます。
また、一見して歯と腰は離れている場所に見えますが、実はこの2つは関連しています。
悪い噛み合わせで下顎がゆがんで咬むとそのゆがみが頸椎・胸椎・腰椎へと負担が波及するのです。
その負担が大きくなると、腰痛となって現れます。
4)頭痛・偏頭痛
噛み合わせが悪いまま歯ぎしりをしたり食いしばりをしたりすると、顎・頭の筋肉が過剰に緊張してしまい、頭痛や片頭痛を起こすことがあります。
5)顎関節症
噛み合わせの異常によって下顎の骨を支えている関節に負担がかかると、顎の関節の動きにも影響が出てきます。
顎が鳴る、顎が痛む、口を大きく開けられない、これらが顎関節症の3大症状といわれています。
6)いびき・睡眠時無呼吸症候群になりやすくなる
歯並びに問題がある場合は奥歯が内側に倒れている傾向が多く見受けられます。
その場合、舌の可動範囲が狭くなり正しい位置に落ち着かないため、必要以上に口が開き口呼吸になりやすくなります。
結果として、それがいびきや睡眠時無呼吸症候群の原因になっていることがあります。
7)精神的な影響
歯ぎしりはストレスが原因で生じる生理現象ですが、うつ病や認知症はストレスが大きな原因となっていることが分かっています。
悪い噛み合わせで歯ぎしりをしていると、うつ病・認知症の発症やその他の精神症状も悪化させるリスクが高くなります。
同様に、強いストレスを抱え込んでいる人の場合、悪い咬み合わせで歯ぎしりしていると自律神経失調症を起こしたり、心身症を起こしたりすることがあります。
また、睡眠障害との関連があるともいわれています。

歯ぎしりの治療について

歯ぎしりは理性のある人間の本能的ストレス解消行動です。
よって歯ぎしり自体をなくすことはできません。
歯ぎしりの治療とは、歯ぎしりをおこなう器官であるお口全体の歯並び咬み合わせを正しく回復することになります。
正しい歯並び咬み合わせとは、下顎骨の顆頭が関節窩の関節円板に負担をかけない奥歯の咬み合わせの高さと、歯ぎしりをしたとき上下の奥歯どうしがあたらない前歯のガイダンスが確立した状態です。
この時、下顎骨は上顎と正中が一致した顎偏位(ゆがみ)のない位置にあります。
歯ぎしりが起こっている原因や、現在の口腔内の状況などを鑑み、頭蓋・下顎システム検査、CT診断、矯正歯科治療、インプラント治療、審美治療、歯周形成外科などの診断や治療方法など総合的な治療が必要になります。

歯並び咬み合わせは、あなたの一生にとってもとても重要です。
キレイで正しい噛み合わせをつくることに積極的に取り組んでくれる歯科医院を探しましょう。
「たかが歯ぎしり程度で・・・」などと思わず、お気軽に歯科医院にご相談くださいね。

[執筆者]

宮澤有理江先生
歯学博士・歯科医・矯正歯科認定医

<経歴>
昭和大学歯学部卒業
昭和大学歯学部歯学研究科博士課程修了(歯科矯正学専攻)
昭和大学歯科病院 歯科矯正科勤務
タカラデンタルクリニック勤務
<所属等>
昭和大学歯科病院 歯科矯正科
日本矯正歯科学会 認定医
日本歯科審美学会
日本口蓋裂学会
日本顎咬合学会会員

タカラデンタルクリニック
http://www.takara-dental.com

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