• HOME
  • 記事
  • ビューティ
  • マザーキラーと呼ばれる病気、子宮頸がんとその予防について、森女性クリニック院長の森先生に伺いました!

マザーキラーと呼ばれる病気、子宮頸がんとその予防について、森女性クリニック院長の森先生に伺いました!

マザーキラーと呼ばれる病気を知っていますか?
20~30代の若年層に多く、出産時期と重なることも多い、子宮頸がんのことです。
実は、子宮頸がんは予防が可能ながんといわれています。
今回は、子宮頸がんとその予防について、森女性クリニック院長の森久仁子先生にお話を伺いました。

がん=老人のかかるものではない。若い人にも気を付けてほしい、子宮頸がんについて

子宮頸がんは子宮の入り口(子宮頸部)にできるがんです。
日本では年間約1.1万人が子宮頸がんにかかり、約2900人がなくなっています。
30歳代前半から罹患率・死亡率ともに上昇し、若年層(20~30歳代)での罹患率が増加傾向にあるため、若い人も注意しなければいけません。
子宮頸がんは、がんの発生する場所によって、2つに分けられます。
1つは扁平上皮がんという子宮頸部にある扁平上皮細胞から発生するもので、約75%を占めます。
もう1つは、腺がんという子宮の奥に近い腺組織の円柱上皮細胞から発生するもので、約23%を占めます。
日本では年々、腺がんの割合が上昇しています。
腺がんは検診で発見が困難で、転移しやすいため治りにくいがんとされています。

子宮頸がんにかかる主な原因は、なんとウイルス

子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが、性交渉により子宮頸部に感染することが原因であるといわれています。
HPVは皮膚にイボを作るウイルスで、100種類以上あります。
このうち約15種類のハイリスク型とよばれるものが子宮頸がんを引き起こします。
ほとんどは免疫機能で自然に排除されますが、一部が持続感染し、そのうちの一部の細胞が異常を起こし子宮頸部異形成という状態になります。
子宮頸部異形成は、進行度の軽い順に軽度異形成、中程度異形成、高度異形成にわけられます。
そして異形成の一部が数年から十数年かけて子宮頸がんにすすむと考えられています。
子宮頸がんが進行すると、治療が困難になるだけでなく、子宮や卵巣を摘出しなければならなくなる可能性があります。

早期発見のためには、子宮がん検診が大切!

早期の子宮頸がんや高度異形成で発見できれば、子宮頸部を部分的に摘出する手術(子宮頸部円錐切除術)で治療でき、治癒率も高いです。
進行すると性交時の出血や不正性器出血や異常な帯下、下腹部痛などがでてきますが、初期には症状がほとんどありません。
このため早期発見には、定期的な子宮がん検診が大事です。
子宮頸がん検診は子宮頸部の細胞をブラシで採取し、顕微鏡で観察します。
この顕微鏡の検査を細胞診といいます。
細胞診の判定はベセスダシステムという判定法でおこなわれます。
細胞診で得られた結果は全て「疑い診断」であり、細胞診のみで診断が確定することはありません。
精密検査が必要となった場合には、まずコルポスコープという機械で子宮膣部を拡大して観察し、病変が疑われる場所から、数ミリの組織を採取して顕微鏡で調べます。
この顕微鏡の検査を組織診といいます。
組織診の結果が診断となります。
軽度異形成や中程度異形成は自然治癒することがあるため、定期的な検査をうけながら経過観察をおこなうこともありますし、高度異形成や上皮内がんや扁平上皮がん・腺がんなどが発見されれば手術が必要になることもあります。

予防のために重要なものは、ワクチン接種

子宮頸がんを予防するためには、子宮頸がんワクチンが有効です。
子宮頸がんワクチンを接種することで、一部のハイリスク型のHPV感染を防ぐことが可能です。
2価ワクチン(サーバリックス)および4価ワクチン(ガーダシル)はHPV16型と18型に効果があり、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぎます。
9価ワクチン(シルガード9)はHPV16型と18型に加え、31型、33型、45型、52型、58型に効果があり、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぎます。
ワクチンはすでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果はないため、初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的です。
性交経験によるHPV感染があると、ワクチンの予防効果が減少しますが、まだ感染していない型の将来のHPV感染を予防できるため、性交経験がある場合でもワクチンの予防効果がなくなってしまうわけではありません。

HPVワクチンは怖いというイメージがあるけれど、接種しても大丈夫?

日本では2013年に子宮頸がんワクチンが定期接種になりましたが、接種後の持続的な痛みや運動障害などの多様な症状が報告され、積極的な勧奨が控えられました。
その後多様な症状が子宮頸がんワクチン特有の症状とはいえない、という国内外の調査結果から、安全性について特段の懸念が認められず、ワクチンの有効性が副反応のリスクを大きく上回るために、2022年から積極的な勧奨が再開しました。
現在子宮頸がんワクチンは、小学校6年生~高校1年生に相当する年齢の女性は、公費で接種できます。
過去に定期接種を逃した平成9年度生まれ~平成18年度生まれの女性も、令和7年3月までは公費で接種できます。
なお、子宮頸がんワクチンに限らず、予防接種法に基づくワクチン接種後に、痛みなどの多様な症状がおきた場合の対応として、接種との関係が不明でも、医療連携体制や相談体制および報告・救済制度が設けられています。

接種率の低い日本…他の国の接種率と子宮頸がんの予防率どうなってるの??

先進国は子宮頸がんワクチンの接種率が高く、カナダやイギリス、オーストラリアでは約80%です。
先進国では、子宮頸がんワクチンの普及とともに、子宮頸がんの患者数・死亡者数は減少傾向ですが、日本ではともに増加傾向です。
また、日本の子宮頸がん罹患率や死亡率は、先進国でもっとも高いです。
これは日本の子宮頸がんワクチン接種率の低さや子宮がん検診受診率の低さが関係しています。
積極的な勧奨前の日本でのワクチン接種率は約1%、2022年4月~2023年3月までの調査では30.2%に上昇していますが、他の先進国よりもまだかなり低いです。
副反応に対する不安や信頼できる情報が得られないことを理由に、接種を躊躇する人が多いといわれています。
また、日本の子宮頸がん検診受診率は約40%であり、アメリカやイギリスの約80%と比較すると低い現状です。
子宮頸がん検診は厚生労働省の「がん予防重点健康教育およびがん検診実施のための指針」において、20歳以上を対象とした2年に1回の定期的な受診が推奨されています。
HPVに感染して20年以上かけて子宮頸がんになる場合もあります。
現在性交渉をする機会がなくなっている状態でも、過去に性交渉の経験がある人であれば、定期的な子宮がん検診を受けることが重要です。

正しい信頼できる情報を提供し、周知を進める取り組みをすることで、子宮頸がんワクチンと子宮がん検診、両者ともに普及していくことが望まれます。

[執筆者]

森久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士
大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局。
同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。
プライバシーに配慮したクリニックで、産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。

森女性クリニック
https://www.mori-ladies.com/

関連記事一覧