ソムリエが勧める!お酒が強くない方も楽しめる「低アルコールワイン」試してみませんか?

お酒はたくさん飲める人もいれば、全く飲めない人もいます。
たくさん飲めば強くなれるのでしょうか?
また、お酒が弱い方にもおすすめの低アルコール飲料は??
今回は、渡仏しワイナリーに住み込みで働いたこともあるソムリエの嵯峨建さまにお話を伺いました。

お酒は飲むほど強くなれる?!

結論から申し上げますと、これは飲酒する人の体質によります。
まず、人体のアルコール分解のメカニズムですが、摂取されたアルコールは肝臓でアセトアルデヒドに分解され、このアセトアルデヒドという物質が溜まると吐き気や頭痛などの原因になると考えられます。
その後アセトアルデヒドはALDHという酵素によって酢酸になり体外へ排出されます。
ALDHには「ALDH1」と「ALDH2」の2種類ありますが、後者の活性具合が「お酒に強い/弱い」体質を決めます。
これは遺伝によって決まることが報告されています。
また、日本人は世界的に見てもこのALDH2の活性が弱い方の割合が多いといわれています。
アルコール分解能力は先天的に決まるものなのです。
「お酒が全く飲めない人」というのはALDH2が完全に活性しない体質で、いくら飲酒してもALDH2の活性は高くなりません。
ただ、これを読んでいる人の中には「自分は飲む機会を増やしてお酒に強くなった」という方がいると思います。
これはMEOSという酵素群の働きによるものと考えられます。
この酵素もアルコールを分解してくれるのですが、体内のアルコールが多くなると活性化する、つまり、飲酒するほど “ある程度は” 強くなります。
ただし、MEOSがアルコールを分解する際には体にとって有害なフリーラジカルを発生させることが分かっており、特に肝臓に負担が懸念され、注意が必要です。
最近はノンアル・低アルコール飲料もお酒に近いテイストで美味しいものが増えています。おすすめをご紹介しますので、ぜひお試しください。

ソムリエがすすめる、お酒の弱い方でも楽しめる低アルコールワイン

■ジョセフ・クローミー・ボトリティス・リースリング
オーストラリアの甘口の貴腐ワインです。
アルコール度数は約9.5%と低めです(通常の白ワインだと約12~14.5%)。
貴腐ワインはその名の通り貴腐菌というカビの一種が付着したブドウでつくられるワインで、ブドウの水分を蒸発させ果汁が凝縮されることで甘くなります。
貴腐菌によるこうした現象は特定の環境でしか起こりませんが、とても甘くて美味しいぶどうになります。
私もフランスのワイナリーで働いていたときは毎日食べていました(勿論、お腹を壊したり体調不良にはなりませんでした)。
このワインは甘口ですが酸がしっかりしているので後味は爽やかです。
樽を使わずに醸造した優しい味わいと低アルコールは、あまりワインを飲み慣れていない方にも親しみやすいと思います。
貴腐ワインといっても種類が多いですが、現在日本で手に入るものではこれが最もコストパフォーマンスが高く美味しいと感じています。
これに合う料理はフォアグラのテリーヌです。
フォアグラのリッチな味わいとこの貴腐ワインの上品かつ芳香な甘さは最高の組み合わせです!
ちなみに、このワインはリースリングというブドウを使っていますが、極甘口から辛口まで多様な種類のワインがつくられています。
アルコールが低いものはやや甘口に仕上げられることが多く、合わせられる料理の幅も広く飲みやすいので、ワイン選びに迷ったときはおすすめです。

■月山トラヤワイナリー ほいりげ
もうひとつ、日本産のワインをご紹介したいと思います。
山形県のワイナリーがつくる亜硫酸無添加のやや甘口ワインです。
アルコールは約7%とかなり低めです。瓶詰めされた状態でも酵母が生きており、口に含むと微発砲でとてもジューシーなワインです。
こちらの商品は年に一度、秋ごろにしか飲めない新酒ですが、非常にフレッシュな優しい味わいは一度飲むと病みつきになります。
お値段も手頃で、現地に行かなくても時期になればインターネットで簡単に手に入る点も素晴らしいと思います。

最近は低価格帯の商品も増えています。
レストランやワインショップで「お手頃のアルコール低めのリースリングのワインをください」と頼めば美味しいものを用意してくれるでしょう。
ぜひ、お気に入りを探してみてくださいね。

TPOに合わせてお酒を楽しもう

年齢や体調によってもアルコールの分解能力は左右されます。
飲むお酒の種類、シチュエーションも人によっては重要になってくるでしょう。
これまで述べたように、お酒が飲める量は人それぞれ限度があります。
日本ではお酒の席のマナーというとビールの注ぎ方など上司への気遣いが注視されますが、立場問わずお酒の許容量を意識し、節度を持って飲むことが一番大事なマナーではないでしょうか。
時と場合によって、楽しみ方も大きく変わってきます。
大人としての自覚を持って楽しく飲酒したいですね。

[執筆者]

嵯峨 建(さが たける)
日本ソムリエ協会認定ソムリエ
2015年に資格取得後、2016年から渡仏。
パリの日本料理店で働きながらフランスのワイナリーを巡る。
セバスチャン・リフォーワイナリーとにドメーヌ・バイアワイナリーに3ヶ月間住み込みで醸造作業と葡萄の収穫を経験。
日本に帰国してからはソムリエとして大阪エアポートワイナリーでソムリエを務めた後、Vinoプレジオ本町内の入居者専用ラウンジにてソムリエを務める。

Vinoプレジオ本町
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