他人のことなのに自分のことのように辛くなる。共感性羞恥について臨床心理士の視点からお教えします。

テレビなどを見ていて、誰かが笑われたり叱られたりしているのを見ると、自分も恥ずかしくなったりつらくなったりする・・・そんな経験はありませんか?
今回は、共感性羞恥と呼ばれる心理状態について、大阪カウンセリングセンターBellflower を運営する臨床心理士の町田奈穂さまにお話を伺いました。

共感性羞恥を感じやすい人はどういう人?

共感性羞恥を感じやすい人は、感受性や共感力が高いといえるでしょう。
他人の感情に敏感で、相手の気持ちを理解しようとする意識が強いと、他人の恥や失敗もまるで自分の痛みのように感じてしまいます。
こうした特性を持つ人はHSP(Highly Sensitive Person)の傾向が高い場合もあります。
また、自己批判的であったり、社会的評価を気にしやすい人も共感性羞恥を感じやすいでしょう。
「自分も同じ失敗をするかもしれない」
「同じように笑われたり叱責されるのではないか」
と不安に駆られ、想像上の恐怖が現実のように感じられるのです。

何が原因で感じてしまう?

共感性羞恥の一因としては、主に感受性の高さや過去のトラウマ的な経験が考えられます。
感受性が高い人は、無意識のうちに他人の感情やストレスの細かな変化を敏感に受け取ってしまいます。
その結果、自分の感情と他人の感情を切り分けることが難しくなり、自分事として受け取ってしまうのです。
また、過去に同じような恥ずかしい経験や、失敗、強い叱責を受けたことがある場合は、その記憶が呼び起こされ、再び同じ感覚を味わってしまいます。
これが共感性羞恥を強める要因になるでしょう。

感じることでメリットやデメリットはある?

感受性が豊かで他者の感情に敏感なため、人の痛みに寄り添うことができる優しさは大きなメリットです。
他人の不調に素早く気づくことで、相手に寄り添い、支える存在になれるでしょう。
こうした共感力は、人間関係の質を高め、長期的に信頼を築くためにはとても大切です。
特にチームでの活動においては、周囲のメンバーのサポート役として力を発揮でき、職場やコミュニティでの信頼を集めることができるでしょう。
一方で、他人の感情に引きずられやすいため、精神的な負担が増えやすく、ストレスや疲労が溜まりやすくなります。
共感するあまり、自分自身の生活に影響を及ぼすこともあるでしょう。
また、他人の失敗を自分の失敗のように感じることで、自己肯定感が低下し、自己批判的になる傾向もみられます。
その結果、恥や失敗を避けるために新しい挑戦に消極的になってしまい、さまざまな機会を逃してしまうこともあります。

克服する方法はある?

共感性羞恥を克服するためには、自分の感情と他人の感情を切り分ける力を養うことが大切です。
1:感情を切り分ける意識を持つ
他人の恥ずかしさや失敗を見たとき、「これは私の感情ではない」と自分に言い聞かせる習慣をつけましょう。
「うわ、恥ずかしい・・・でもこれは自分のことじゃない」
と意識するだけでも、負担が軽減されます。
2:適度に対人交流を制限する
疲れているときは感情のコントロールが難しくなります。
自分の体調や余裕を見極め、必要以上の対人交流を避けることも大切です。
無理をしない範囲で関わり方を調整しましょう。
3:セルフ・コンパッションを実践する
自分を思いやり、失敗や恥を受け入れる力である「セルフ・コンパッション」を育むことも効果的です。
これにより、自己批判を和らげ、自分への肯定感を高められます。
4:専門家のサポートを受ける
共感性羞恥が生活に支障をきたす場合は、臨床心理士や公認心理師といった専門家のサポートを受けるのも有効です。
セルフ・コンパッションを含む心理的スキルを一緒に学び、感情の扱い方を見直していきましょう。

[執筆者]

町田奈穂
大阪カウンセリングセンターBellflower 代表
臨床心理士・公認心理師

[プロフィール]
同志社大学大学院在学時より、滋賀医科大学医学部附属病院などで、不眠症やうつ病等の精神疾患の治療に取り組む。
2020年、支援者支援専門のオンラインカウンセリングをおこなう、大阪カウンセリングセンターBellflowerを開設。
支援者支援の必要性の普及活動に加え、不眠症の研究にも取り組んでおり、教育委員会や児童精神科にて発達障害等、様々な育児や教育の相談および情報発信をおこなっている。
CLASSY.など雑誌他webメディアにも監修等記事掲載あり。

大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/

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