歯ぎしりが睡眠トラブルと関係がある?睡眠トラブルと歯の関係についてN.S.デンタルクリニック院長の長里先生にお伺いしました。

最近上手に眠れない・・・と感じたときに、寝具や気温など就寝時の環境を見直したり、カフェインの摂取を控えよう、寝る前にスマホを見るのをやめようなど生活習慣を見直したりされる方は多いでしょう。
ですが、口腔環境を改めようという方は少ないのではないでしょうか?
実は、口腔環境と睡眠には大きな関係が…今回は、N.S.デンタルクリニック院長の長里康史先生にお話を伺いました。

噛み合わせの重要性

歯の噛み合わせは、私たちの全身の健康に深く関わる重要な要素です。
各歯には適切な力の許容量が設定されており、この許容量を超える力が継続的に加わると、歯根膜に過度な負担がかかります。
その結果、歯根膜が肥厚し、歯が浮いたような不快な違和感を感じることになります。
この状態は「咬合性外傷」と呼ばれ、放置すると深刻な歯周病や顎関節症の原因となる可能性があります。
噛み合わせに影響を与えるものとして、歯ぎしりや食いしばりがあります。

あなたは大丈夫?歯ぎしりや食いしばり

睡眠の質と歯の健康状態には深い関連性があります。
歯ぎしりやくいしばりは、歯のエナメル質の摩耗や顎関節への負担だけでなく、睡眠の質も低下させ、全身の健康に影響を及ぼします。
主な原因は、ストレスや不安、不規則な生活リズムです。無意識に行われるため、私の臨床経験では、多くの患者さんが配偶者や家族からの「夜中に歯をギリギリ鳴らしている」という指摘で初めて自覚症状を認識するケースがほとんどです。
中には何年も気づかずに過ごしてきた方も少なくありません。
長期化すると、頭痛や顎の違和感、首や肩のこり、さらには顎関節症や慢性的な筋肉の疲労などの症状が現れることがあります。
特に深刻なのは、中途覚醒による睡眠の質の低下で、日中の眠気や集中力の低下、免疫機能の低下などを引き起こす可能性があります。

歯ぎしり・食いしばりの影響

偏頭痛の発生
歯ぎしりやくいしばりにより、顎の筋肉に過度な負担がかかることで、深刻な偏頭痛を引き起こすことがあります。
この痛みは朝方に特に強く感じられ、日中の活動に支障をきたすことも少なくありません。
首や肩のこり
顎の緊張は首や肩の筋肉にも連鎖的に影響を及ぼし、慢性的な肩こりや首の痛みを引き起こします。
これらの症状は日常生活の質を著しく低下させる原因となります。
睡眠障害(中途覚醒)
歯ぎしりやくいしばりは深い睡眠を妨げ、夜中に目が覚めてしまう中途覚醒の原因となります。
その結果、日中の疲労感や集中力の低下につながり、仕事や学業にも影響を与えることがあります。
歯の過度な摩耗
継続的な歯ぎしりにより、歯のエナメル質が徐々に摩耗していきます。
これにより知覚過敏や歯の痛みが発生し、最悪の場合、歯の神経に達する深刻な損傷を引き起こす可能性があります。
顎関節症の発症リスク
過度な力が顎関節にかかることで、顎関節症を引き起こす可能性が高まります。症状としては、顎の痛みや開口障害、顎関節のクリッキング音などが現れ、放置すると慢性化する恐れがあります。
知覚過敏の発症と対策
継続的な歯ぎしりは、歯のエナメル質を徐々に摩耗させ、深刻な知覚過敏を引き起こす可能性があります。
知覚過敏は、冷たい飲み物や温かい食べ物に対して鋭い痛みを感じる状態で、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
特に注意すべき点は、この症状が虫歯との区別が困難な場合があることです。
そのため、症状が現れた際は必ず歯科医院での専門的な診断を受けることが重要です。
早期発見・早期治療により、症状の進行を防ぎ、より効果的な治療が可能となります。

マウスピースによる対策

就寝時のマウスピース使用は、歯ぎしりやくいしばりによる問題を予防・改善する最も効果的な方法の一つです。
特に推奨されるのが硬質タイプ(スプリント)のマウスピースです。
このタイプは歯への負担を均等に分散させ、過度な力から歯を保護する効果があります。
一方、ソフトタイプのマウスピースは装着時の異物感が強く、かえって噛みしめを誘発する可能性があるため、長期的な使用には適していません。
また、硬質タイプは耐久性も高く、長期間使用しても形状が大きく変化しにくいという利点もあります。

口腔の健康を維持してぐっすり眠るための包括的なアプローチ

良質な睡眠を確保し、口腔の健康を維持するためには、適切な噛み合わせの維持が不可欠です。
そのためには、定期的な歯科検診を受け、早期に問題を発見することが重要です。
また、自身の症状や生活習慣に合わせた適切な対策を講じることも必要となります。
特に就寝時の歯ぎしり対策としては、硬質タイプのマウスピースの使用が最も効果的な方法の一つとされています。
ただし、マウスピースの選択や使用方法については、必ず歯科医療の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。
これらの対策を総合的に実施することで、より健康的な口腔環境を維持することが可能となります。
快眠のためにも、良い口腔環境を目指しましょう。

[執筆者]

長里康史先生
N.S. デンタルクリニック 院長
私は自分の厄介な歯ぎしりの癖(これにより知覚過敏が酷くなってきてしまったため)が動機付けとなり、自分で人体実験をしてオリジナルのマウスピース(特許出願中)を産み出せました。
これが無かったら、この様な説明は出来ませんでした。
気になる事など、御座いましたら御気軽に御相談下さい。
略歴
平成23年 奥羽大学歯学部卒業 奥羽大学附属病院 臨床研修
平成24年 都内歯科医院勤務
平成29年 N.S. デンタルクリニック 開院

N.S. デンタルクリニック
https://www.ns-dental-cl-smile.com/

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