いつまでも若々しい脳でいるには?脳のアンチエイジングについて
以前、脳のアンチエイジングには運動が効果的であるということをお伝えしました。
(前回記事:脳トレよりも筋トレ??脳のアンチエイジングについて)
今回は、脳に良い影響を与える食事についてお話ししたいと思います。
例えば、『肌に良い』『美容に良い』などのキーワードだと、ビタミンA・C・E、コラーゲン、ポリフェノール…といった成分が思い浮かぶかもしれませんが、『脳に良い』だと何も思いつかないという方も多いかもしれませんね。
脳の働きを高め、若々しさを保つための食事とは、どのようなものなのでしょうか?
脳のためには何を食べる?! 積極的に食べたいもの、控えたいものとは
脳の健康を保つためにはどのような食事が望ましいか、米国でおこなわれた調査についてお話しします。
Oregon Health&Science大学のG.L.Bowman教授は、104名の健康な高齢者(平均年齢87歳)を対象に、さまざまな栄養素の血中濃度と認知機能や脳の大きさとの関連を調査しました(出典:Neurology.2012 Jan24;78(4):241-9)
すると、認知機能検査の結果が良好だったのは、『ビタミン類(B群、C、D、E)が高いタイプ』と、『魚由来のオメガ3系脂肪酸が高いタイプ』という結果に。
そして反対に、認知機能検査の成績が悪く、脳が委縮している結果になったのは『トランス脂肪酸の濃度が高い』タイプだったとのこと!
また、アラブ首長国連邦と英国の共同研究のヒト(軽度の認知障害を有する168人の高齢者)を対象とした研究においても、オメガ3系脂肪酸とビタミンB群(葉酸・B₆、B₁₂を含む)の両方が認知症の予防に有効である可能性が2015年に発表されており、ビタミンとオメガ3系脂肪酸の摂取の重要性がうかがえます(出典:Am J Clin Nutr. 2015 Jul;102(1):215-21)。
ビタミンB群はレバーや葉物野菜・果物・ナッツなどに、そしてオメガ3系脂肪酸はイワシやサバといった青魚に多く含まれています。
最近は、アマニ油やエゴマ油といったオメガ3系脂肪酸を含む植物油もポピュラーになってきたので、積極的に活用したいですね!
部分水素添加油脂に由来するトランス脂肪酸は、スナック菓子やファストフード、揚げ物に多く含まれています。
心疾患のリスクを高めるといわれるトランス脂肪酸。
脳だけでなくキレイと健康のためにも、摂取する量と頻度には気を付けましょう。
脳をしっかりと働かせるには○○の急上昇に気を付けよう! 上手なエネルギーの摂り方は?
脳の重さは、体重の約2%だといわれており、成人ではだいたい1.2~1.4kg程度となります。
占める割合は小さいですが、脳が消費するエネルギー量はなんと全体の約20~30%!
脳はとっても食いしん坊な臓器で、たくさんのエネルギーや栄養素を必要としています。
“脳はブドウ糖を主なエネルギーとしている”と聞いたことがある方は、「エネルギーがたくさん必要な脳をしっかり働かせるためには、糖をたっぷり摂取することが大切なのね!」と思われるかもしれません。
ですが「今日は朝から大切な試験だから、脳がしっかり働くように、朝ごはんは甘いものでたっぷり糖質を摂ろう!」と考えるのは、どうやら早計なようです。
英国Loughborough大学のSimon B.Cooper教授は、12~14歳の男女52人を対象におこなった試験で、高GIの朝食や朝食抜きの場合より、低GIの朝食を摂った方が、テストをおこなった注意力・集中力・短期記憶力の3つの項目のすべてにおいて正答率が高く、特に短期記憶力については優位に向上したと報告しています(出典:Br J Nutr.2012 Jun;107(12):1823-32)。
※GI値はブドウ糖摂取時の血糖症の上昇率を100として計算され、精製されたものや手が加えられたものほど高いという傾向があります。
GI値例
白米:84 ⇒ 胚芽米:70 ⇒ 玄米:56
食パン:90 ⇒ 全粒粉パン:50
うどん:80 ⇒ そば:59
上白糖:110 ⇒ 黒砂糖:99 ⇒ はちみつ:88
試験中の朝食は、高GI・低GIのどちらでも、摂取する糖質の量は75gと同じでカロリーも同一。
つまり、ただ糖質を摂るだけではダメで、摂り方にもコツがあったのです。
血糖値を急上昇させることが、生活習慣病のリスクを上げたり、糖化を促進させたりすることはご存知かと思いますが、それだけではなく脳の働きにまでも影響があるとは意外ですね。
血糖値の急上昇は、食べる順を意識することでも抑えることができるので、空腹時に糖質をいきなり摂取するのではなく、穏やかに吸収するよう、べジファースト(野菜や海藻など食物繊維の多いものから食べる)の実践もおすすめです。
アルツハイマーを患う方の前頭葉には、AGEs(糖化最終生成物:糖とたんぱくが結合し、蓄積しやすく排出され難い有害物質)が、健常な老人の3倍も蓄積しているとの報告がされています。
脳の重要なエネルギー源である糖ですが、摂取する糖の種類やその摂り方、摂取量などはしっかり考える必要がありますね!
脳の若々しさを保つには、ビタミン類とオメガ3系脂肪酸の摂取、そして血糖コントロールが重要であるようですね。
今回お話しした食事も、前回お話しした運動も『一度おこなえば脳の働きが改善する!若返る!』というものではなく、しっかりと継続させることがいちばん大切です。
肌にも、健康にも、そして脳にも、特効薬といえるような近道はありません。
一見遠回りのようですが、バランスの良い食事と適度な運動を地道に続けることこそが、一番効果的なアンチエイジング方法といえるようです。
継続……実はそれが一番難しいのですが、頭の片隅にでもしっかり置いて、日々の生活で意識するということを続けていきたいですね。
[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]