【前編】肌トラブルの元凶「肌の乾燥」をなんとかしたい!洗顔から意外な保湿ポイントまで!豊田先生に伺いました!

冬になると肌が乾燥して困っているという方は多いと思います。
今回は、冬の乾燥肌の原因と対策について、うるおい皮ふ科クリニック院長の豊田雅彦先生にお話を伺いました。

冬になり気温が低下すると共に肌が乾燥してきます。乾燥肌は肌に備わっている「皮膚バリア機能」の働きが低下し、肌に水分を蓄える力が弱まる結果として生じます。乾燥肌は、カサカサ(赤み、かゆみなど)、ブツブツ(ニキビなど)、皮膚のキメの乱れ(しみ、シワ、くすみなど)などの肌トラブルの「元凶」ですから放っておくことは出来ませんね。

気が付くとカサカサに!冬にお肌が乾燥する原因とは


冬に肌が乾燥する理由は肌の内部(A)と外部(B)両方の要因に由来します。
(A) 皮膚の最も外側(外界に接している面)は、角層と呼ばれ角層細胞が堆積しており、皮膚からの水分喪失、紫外線照射、外界からの雑菌・異物・アレルギーのもと(アレルゲン)などの侵入から皮膚を守っています(皮膚バリア機能)。
角層細胞自身は死んだ細胞であり、いわゆる垢ですが、皮膚のうるおいは角層の有する三大因子による皮膚バリア機能のおかげで保たれています。
保湿の三大因子とは、
(1)皮脂膜:肌の表面を覆う、皮脂と汗が混ざってできる皮膚を守る膜で水分の蒸散を防ぐ。
(2)角層細胞間脂質[1]:主体はセラミドで角層細胞間を埋め、水分を逃がさず抱え込む働きを有する。
(3)天然保湿因子:主体は種々の水溶性のアミノ酸で角層細胞の中に存在するで、水分を取り込む吸湿性と、水分を保つ保湿性の両方の働きがある[2]。
の3つです。
(B)冬の外気は乾燥し、屋内は暖房の影響で湿度が低下します。また、汗をかく機会が減り、体の新陳代謝の低下から皮脂分泌も低下します。
この乾燥状態で、皮脂膜が薄くなる結果、皮膚からの水分蒸散量が増加し、皮膚から水分がどんどん失われ乾燥肌となります。
角層細胞はそのもととなる細胞(基底細胞)の分裂により新しくつくられた細胞が徐々に上方に押し上げられた、いわゆる“皮膚の最終章”ともいえます。
角層細胞はウロコのように重なっていて、時間が経つと垢やフケとなってはがれ落ちます。このように、細胞が生まれてから体を離れるまでを「表皮のターンオーバー」といい、その周期は部位・年齢・季節などにより影響を受けますが、一般に20代で平均30日で加齢によって徐々に遅くなっていきます[3]。
皮膚バリア機能は常に細胞が生まれ変わるこのターンオーバーによって健やかに保たれています。
冬の寒さは体の冷えを生じ血行が悪くなります。血行不良は肌への栄養や酸素が届きにくくなってしまいます。
肌の栄養が不足すると、ターンオーバーが乱れ、正常な角層細胞や肌内部で作られ角層に供給している保湿因子(角層細胞間脂質と天然保湿因子)が不足します。その結果肌のバリア機能の低下が生じ乾燥肌となります。

洗顔をしてもうるおいを保つために大切なこと

肌が乾燥している時のスキンケアには、肌の内部を潤す湿潤剤(モイスチャライザー)と、肌表面を保護し内部の水分を逃がさない保護剤(エモリエント)の両方が必要です[4]。
保湿剤は化粧水や保湿液、保護剤は乳液やクリームに相当します。モイスチャライザーで水分をたっぷりと肌に浸透させて、エモリエントの油分でふたをする「ペア使い」が大切です。
洗顔や入浴時の洗浄剤の使用により、肌の保湿成分が洗い流されます。洗浄剤は油分を洗い流すため、過度な洗浄剤の使用により皮脂膜やセラミドなどの角層細胞間脂質が減少し、肌の水分が蒸発しやすい状態となってしまいます。
また天然保湿因子は主として水溶性ですので、長時間湯船に浸かることにより流れ出します。また、顔や体を洗う時にメイクや汚れを落とそうとゴシゴシと肌を強くこするのは、バリア機能において最重要な角層そのものをはがし落とすこととなります。「うるおいある健やかでキレイな肌の人ほどこすらない」ことを肝に銘じてください。
洗顔のポイントは、
(1)洗顔石鹸を泡立てネットでモコモコに泡立てて顔にのせてなでるだけ
(2)すすぎはシャワーなら弱い水圧で少し冷たく感じるくらいの温度でそっと優しくすすぐ
(3)清潔な柔らかい素材のタオルで、顔を軽く押すように水気を拭き取る
の3点です。

保湿の意外なポイント

(1)保湿剤は1日2回以上使用すること
保湿剤を1日1回と2回の外用による保湿効果を検討したデータでは、1日2回の方が保湿効果が明らかに高く、1日1回では外用使用量を増やしても効果への影響は認められていません [5]。寒い朝にひんやりとした保湿剤を塗るのは大変ですが、乾燥肌でかゆい日中を過ごすことを予防するためにも頑張りましょう。
(2)入浴・洗顔は低めの温度で、部屋の湿度にも注意する
43℃のお湯での入浴では水分蒸散量が増加し、角層水分量が入浴前よりも低下するといわれているます。これに対して37℃や40℃ではこのような現象は認められていません[6]。高温のお湯では皮脂膜の油分も流れ出ると考えられます。理想のお湯の温度は38~40度。洗顔時、家事、手洗い時のみでもお湯の温度を気にかけてみてはいかがでしょうか。
また、角層水分量に対する湿度影響では、相対湿度30%と60%で角層水分量を調べた結果、30%では低いとの報告があります[7]。気温も角層水分量に影響するのです。特に皮脂量は、湿度には影響されませんが、温度が低下すると分泌量が低下し、皮脂膜の形成に影響することから、冬では室温にも注意が必要です[8]。

[参考文献]
[1] Rogers J, et al. Stratum corneum’s lipids: the effect of ageing and the seasons. Arch Dermatol Res 1996; 288: 765-70
[2] Katagiri C, et al. Changes in environmental humidity affect the water-holding property of the stratum corneum and its free amino acid content, and the expression of filaggrin in the epidermis of hairless mice. J Dermatol Sci 2003; 31: 29-35
[3] 豊田雅彦. 「頑固なかゆみもアトピーも1分肌活で必ずよくなる」; 2018, pp34, 三笠書房
[4] 野澤茜、他:保湿剤の効果に及ぼす入浴と塗布時期の関係. 日皮会誌 2011; 121: 1421-6
[5] 大谷真理子、他:保湿剤の効果に及ぼす塗布量および塗布回数の検討. 日皮会誌 2012; 122: 39-43
[6] 岡田ルリ子、他:温浴がもたらす皮膚生理機能への影響:角層水分量・水分蒸散量の見地から. 愛媛県立医療技術大学紀要 2006; 3: 45-50
[7] 阪井美樹、他:温湿度が角層水分量に及ぼす影響. 大阪市立大学生活科学部紀要 2000; 48, 1-6
[8] 藤田友香、他:皮膚に及ぼす気象要素の影響―夏季・秋季について. 地球環境研究 2008; 10: 49-67

執筆者

豊田雅彦先生
うるおい皮ふ科クリニック院長

[経歴]
皮膚科医として、特に皮膚科の患者の中で最も多い悩みである「かゆみ」をとることをライフワークに掲げる医学博士。
「頑固なかゆみもアトピーも1分肌活で必ずよくなる:三笠書房」「新しい皮膚の教科書~医学的に正しいケアと不調改善~:池田書店」など書籍も多数執筆、好評を得ている。
現在までに2,000以上の医学論文・医学専門書を執筆。国際皮膚科学会において臨床 (2002)と研究(2004)の両部門で世界初の単独世界一を受賞。
また、国内外で年間最多250以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う皮膚病・かゆみのスペシャリスト。
現在は千葉県松戸市にてうるおい皮ふ科クリニック(皮膚科、美容皮膚科、漢方皮膚科、アレルギー科、形成外科)を開業、院長として日々患者と向き合い、かゆみを失くすことに尽力している。

[専門医]
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医

うるおい皮ふ科クリニックホームページ
http://www.uruoihifuka.com/sp/

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