【前編】寝れない。眠れない。20~30代に多い睡眠の悩みの原因と対策をお伝えします!

睡眠に関する悩みを持っている方は多いと思いますが、実は年代によっても、原因や対策が変わってくるってご存知でしたか?
身体変化やライフステージによって変化する睡眠の悩み。
今回は、20~30代に多い睡眠の悩みについて、大阪カウンセリングセンターBellflower を運営する臨床心理士の町田奈穂先生にお話を伺いました。

睡眠の基本:身体のリズムからくる影響

私たちの身体には体内時計と呼ばれる概日(がいじつ)時計が備わっています。
この体内時計が、私たちの体温や血圧の調整やホルモンバランスといったさまざまな身体の調整機能を担っており、約25時間周期で生理的なリズムを刻んでいるのです。
このリズムはサーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれているもので、聞いたことがある方も多いかと思います。
サーカディアンリズムは光や温度変化のない状態においても自然と刻まれることが明らかになっており、まさに生物の本能として機能しているのです。
体内時計は光や音に大きく影響を受けます。
電球が発明される前までは、日が登れば自然と体温や血圧が上がり、身体が活動の準備を始めました。
日が沈めば、体温や血圧が下がり始め、自然と活動を終え、休息準備が始まっていました。

しかし、電球が発明されたことによって、人は日が沈んでも活動出来るようになりました。
太陽の光によって刻まれる生体リズムから、徐々に人間の生活リズムというものが出来たのです。
それにより、人々の生活は徐々に後ろ倒し、つまり夜遅くまで起き、朝も以前よりは遅くから活動が始められるようになりました。
特に近年では仕事や付き合いだけでなく、趣味の活動やSNSなどの影響から夜中まで起きているという方も増えたのではないでしょうか。
体内時計は光の影響を大きく受けます。そのため、夜遅くまで光を浴びていることによって、体内時計が徐々に狂い始め、身体本来の生体リズムのズレが生じます。それにより身体のさまざまなバランス、特に自律神経のバランスの乱れなどが起こり、睡眠の質の低下やなかなか眠れない、しっかり眠っているはずなのに疲労が残っているといった睡眠の問題が起きてくるのです。

仕事や人間関係からくるストレスによる影響

発達心理学者エリクソンが提唱するライフサイクルの考え方、生涯発達論によると、20代~30代の女性は、激しい思春期・学生時代を乗り越え、社会に出て自立していく時期です。
女性の身体としての成熟も落ち着き、肉体的にも精神的にもエネルギッシュに活動できる時期です。
この時期では、社会の中で友人や恋人、同僚といったさまざまな人間関係の構築に重きが置かれます。
人と親密になることを重視する一方で、関係性への不安や心配から孤独感を感じるネガティブな面もあることがこの年代のポイントです。
要するに、人間関係に重きを置いてしまう年代ということです。
仕事をすることで自由になるお金が増え、趣味や恋人や友人との交流の幅も増えていくでしょう。
しかし、その中で生じるさまざまな不安や心配に適切に対処することができないと、それがストレスとして蓄積していき、自律神経を乱れさせるなどの生体リズムへの悪影響があるのです。
ストレスは交感神経を活発にさせます。
本来、休息時には副交感神経が活発にならなければいけませんが、夜になっても交感神経が活発になりすぎていることにより、なかなか休息することができない、という睡眠への悪影響が生まれてしまっているのです。

S N S

SNSを見続けることで、光や音の影響を受け、睡眠に悪影響。
SNSを通した人間関係のストレスから影響を受け、睡眠に悪影響。
この2つは前述しましたとおりですが、もう一つ、SNSの魔法について説明します。
最近では動画に特化したSNSが流行っていますね。
これは動画配信サイトで見たい動画を探して見る、というよりも受動的な行動です。
大袈裟な言い方をすると、見続けるも止めるも、アプリ側にコントロールされていると言えます。
手軽に単純に快楽を得ることが出来るというのは、人間は生理的にハマりやすいです。
特に深夜の脳機能が低下した状態にはもってこいなのです。
これまで、「昨日は夜更かししてしんどいから、今日は絶対早く寝るぞ!」と日中決意をしていても、夜になるとまたSNSを見ていていつの間にか夜更かししていた、ということがありませんでしたか?
あれは、寝ることによって回復していた判断能力が、仕事や人との交流の中で徐々に低下していき、夜になると最低な状態に陥っていることにより、「早く寝ないと」というごく当たり前の判断もできないようになってしまっているからなのです。
この低下した判断能力に動画に特化したSNSはピッタリとハマってしまい、ついつい見過ぎて夜更かししてしまう、という悪循環ができているのです。

身体が元気

睡眠障害というのは、若年層ほど見つけられずに深刻化しているという研究があります。
というのも、10代、20代というのは身体にエネルギーが溢れており、「寝なくてもなんとかなってしまう」というパワーがあるからです。
「私は寝なくても平気」「私、ショートスリーパーだから」というのは、若さからくる回復力に支えられているという人が大半です。
個人差はありますが人は本来、身体の成長発達に合わせて取ることを推奨される睡眠時間というものがあります。
10代では8~11時間、20代以降では7時間~9時間です。
この時間未満の時、足りていない睡眠時間は、『睡眠負債』として、睡眠借金が身体の中に蓄積されていきます。
この睡眠負債は後々、肌やこころ、身体の病気などさまざまなところに現れてきます。

対策

・生活リズムを整える
・適度な運動
・自分なりのセルフケア・メンタルケア法を持つ
・SNSルールなどをつくる

多少睡眠が乱れても、若さで何とかなってしまう年代であっても、良質な睡眠をとることは重要です。
できる所からでよいので、少しずつ生活を改善し、快適な睡眠を目指しましょう。

[執筆者]

町田奈穂
大阪カウンセリングセンターBellflower 代表
臨床心理士・公認心理師

[プロフィール]
同志社大学大学院在学時より、滋賀医科大学医学部附属病院などで、不眠症やうつ病等の精神疾患の治療に取り組む。
2020年、支援者支援専門のオンラインカウンセリングをおこなう、大阪カウンセリングセンターBellflowerを開設。
支援者支援の必要性の普及活動に加え、不眠症の研究にも取り組んでおり、教育委員会や児童精神科にて発達障害等、様々な育児や教育の相談および情報発信をおこなっている。
CLASSY.など雑誌他webメディアにも監修等記事掲載あり。

大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/

関連記事一覧