睡眠に関する悩みを持っている方は多いと思いますが、実は年代によっても、原因や対策が変わってくるってご存知でしたか？
身体変化やライフステージによって変化する睡眠の悩み。
今回は、更年期を迎えた女性に多い睡眠の悩みについて、大阪カウンセリングセンターBellflower を運営する臨床心理士の町田奈穂先生にお話を伺いました。
更年期を迎え、ホルモンバランスの変化が睡眠に影響
女性の４０代後半から５０代は更年期とよばれる時期です。
閉経を迎え、卵巣の機能が低下してくることで、女性ホルモンの一種、エストロゲンの分泌が減少し、ホルモンバランスが乱れ、こころと身体に、大なり小なり、さまざまな不調が現れる方が多くなります。
この時期に現れる、肩こりや疲れやすさ、頭痛やのぼせ、不眠、イライラなど気分の増減が日常生活に支障をきたしてくると、いわゆる更年期障害と呼ばれ、治療が必要となる方もいます。
そこまででなくとも、少しずつこころや身体に何かしらの違和感が生じる時期だといえます。
こういったさまざまな不調とホルモンバランスの乱れが、身体本来の生体リズムへ影響し、睡眠への悪影響を及ぼしていると考えられます。
例えば、エストロゲンの影響によってイライラや情緒不安定が起こります。
脳内の神経伝達物質の一つに、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」があります。
セロトニンは、喜びや快楽に関わるドーパミンや、不安や恐怖に関わるノルアドレナリンをコントロールすることによって精神を安定させます。
そしてこのセロトニンの働きに大きく関わっているのがエストロゲンです。
更年期を迎え、エストロゲンの分泌が減少することによって幸せホルモンの分泌が減ってしまい、気分が落ち込むなどの症状や、イライラといった情緒不安定が生じてくるのです。
どれだけ生活リズムを整えていても、生体変化によってどうしても生体リズムの乱れ、ひいては睡眠の乱れが生じやすくなってしまう時期です。
ライフステージの変化（第２の人生）
発達心理学者エリクソンによれば、この時期はこれまで培ってきた家庭や社会の中での役割、さまざまな経験をベースに次のステップへと移行する時期だといわれています。
キーワードは次世代。
後輩や後輩の育成、管理職としてのステップアップや、お子さんが成人し、孫が生まれ、おばあちゃんとして次世代の育成であったり、これまで培ってきた数々の知識や経験を次世代に伝えていくことにより、自信がさらに成長発達され、そこに活動のエネルギーを注ぐ時期です。
それと同時に、これまでの培ってきた家庭内・社会的な立場が確立されていることによる“停滞”が生じるネガティブな面もあります。
いわゆる「私たちの若い頃は…」といった人たちもこの時期に次世代への関心の薄さや関わりを避けることにより生じていると考えられます。
身体的な変化だけでなく、このようなライフステージの変化にも揺り動かされることにより、安定していたものが壊され、ストレスフルな状態に陥ります。これにより睡眠への悪影響も起きやすいといえるでしょう。
頭痛、腰痛、肩こり…慢性的な痛みにも注意
更年期の症状にも含まれていますが、頭痛や肩こりや腰や膝など関節の痛み、なんだか身体が痒い、というのもこの時期の女性に生じやすい症状です。
日常生活の中で、原因がないにも関わらず痛みが常に生じていることから、“慢性疼痛”と呼ばれています。
これら、痛みや痒みが気になって眠れない、という二次的に不眠症状が生じるのもこの時期の特徴です。
対策
・生活リズムを整える
・更年期障害の治療（ホルモン療法・漢方・その他向精神薬）
・次世代との積極的な関わり
・カウンセリング：ACT（アクト）など、慢性疼痛と上手に共存していく手法を身につける
ぐっすり眠ることは、健康やQOLにも大きな影響を与えます。
心も体も元気に過ごすために、少しずつ生活を改善し、快適な睡眠を目指しましょう。
［執筆者］
町田奈穂
大阪カウンセリングセンターBellflower 代表
臨床心理士・公認心理師
［プロフィール］
同志社大学大学院在学時より、滋賀医科大学医学部附属病院などで、不眠症やうつ病等の精神疾患の治療に取り組む。
2020年、支援者支援専門のオンラインカウンセリングをおこなう、大阪カウンセリングセンターBellflowerを開設。
支援者支援の必要性の普及活動に加え、不眠症の研究にも取り組んでおり、教育委員会や児童精神科にて発達障害等、様々な育児や教育の相談および情報発信をおこなっている。
CLASSY.など雑誌他webメディアにも監修等記事掲載あり。
大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/
