肌が再生するって本当?!話題の美容成分PDRNの効果とプレジュビネーションについて化粧品開発者が解説!

今、美容医療で注目の成分・PDRNが、美容液やクリームなど日常のケアにも話題になっています。
SNSでは「#salmonDNAskincare」「#プチ整形級」「#爆美女成分」などのワードで広まり、インフルエンサーからも支持されているPDRN。
本当にものすごい効果が期待できるのでしょうか?
今回は、その成分の由来や使う上での注意点など、現役化粧品開発者が解説します。

そもそも、PDRNって何?!

PDRN(Polydeoxyribonucleotide:ポリデオキシリボヌクレオチド)は、デオキリボヌクレオチドの重合体(ポリは多数という意味を持つギリシャ語由来で、重合体を意味します)のこと。
デオキシリボ核酸=DNAと習ったことがあるかと思いますが、デオキシリボヌクレオチドはDNAの欠片のようなもので、それがたくさん集まった成分といったイメージでしょうか。
主にサケやマスの精子から抽出され、創傷治療促進や血管新生1)・関節炎2)や歯周炎3)の軽減など、さまざまな効果が報告されている、注目の成分といえます。
(ただ、これらの効果はマウスやラットを用いた試験によるもの。そのまま同様の効果がヒトで得られるかは明らかになっていないという点にはご注意くださいね)
美容医療の分野でも「サーモン注射」などと呼ばれ、インフルエンサーや芸能人などの影響もあり人気になっています。
魚由来のDNAはヒトDNAと親和性があると考えられていますが、エコやヴィーガンといった考えの広まりもあり、高麗人参や緑茶由来で植物性のPDRNも登場しました。
そして最近では、クリニックで使用されるのみでなく、PDRNを配合した化粧品も市場に並んでいます。
PDRNのように、幹細胞培養液やエクソソームなど、美容医療で注目を集めた成分が「次世代再生系コスメ成分」として、化粧品に配合され人気を集めるというのは、近年流行の流れといえるかもしれませんね。

どんな効果が期待できるの?注意すべき点もチェック

さまざまな効果が報告されているPDRN。
PDRNを配合した化粧品なんて、期待が高まりますよね。
ですが、注射などで体内に注入する美容医療と、肌に塗布する化粧品(しかも濃度も医療用と比較すると数百分の1以下と考えられる)では、同じ効果を期待するのは難しいと考えられます。
期待できる効果としては、保湿、ハリやつや感のアップ、抗炎症、細胞賦活などになり、「整形級」や「一度の使用で見違えるように」・・・という効果の実現は難しいでしょう。
そもそも、そのような効果がある化粧品は、PDRNを使用していてもいなくても、残念ながら存在しません。
化粧品は、健やかな肌を保つためのもの。
ご自身の肌に合ったアイテムを使った、毎日の適切でていねいな、心地よいと感じられるケアがいちばん大切です!
また、魚由来の成分となりますので、アレルギーをお持ちの方は、医師に相談してからお使いくださいね。

未来の肌への投資、プレジュビネーションって?

PDRNのブームを支えているのが、近年美容医療やスキンケア業界で注目されている「プレジュビネーション(予防的若返り)」という考え方にあるように思います。
プレジュビネーション(prejuvenation)は、pre(事前、先行といった意味の接頭語)とrejuvenation(若返り)を組み合わせた造語です。
大人になると、自分の写真を見返して「あれ?ちょっと疲れて見えるかも」と思う瞬間がありますよね。
前には気にならなかったシミやシワ、たるみなどが気になってしまう。
その後大慌てでケアをしても、なかなか効果が感じられない・・・という悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
プレジュビネーションは、シワやたるみなど目に見える老化サインが出てから対処するのではなく、その兆候が現れる前に予防的にケアをおこないましょう、というエイジングケアのアプローチ。
将来の変化に先回りして備える、まさに「肌貯金」を積み立てるようなイメージです。
最近の若い方は、10代や20代で、まだほとんどシミやシワがなくても、それらのケアをしていたり、髪が薄くなる前に頭皮ケアを始めていたりする、高い美容に対する意識を持った方が、男女ともに多いと感じます。
今の小さな積み重ねが、10年後の自分の美しさや自信につながる・・・それがプレジュビネーションの魅力なのかもしれませんね。
毎日のスキンケアも大切ですが、規則正しい生活やバランスの取れた食事、そして何より肌ケアでは紫外線対策が最重要といえます!
プレジュビネーションのために何をするのが自分にとって最適なのか、しっかり考えつつ、自身の肌状態を日々確認しながらケアを楽しんでくださいね。
「あなたは10年後の自分に、どんな肌を残したいですか?」

<参考文献>
1)M Galeano et al., Polydeoxyribonucleotide stimulates angiogenesis and wound healing in the genetically diabetic mouse. Wound Repair Regen. 2008 Mar-Apr;16(2):208-17
2)A Bitto et al., Polydeoxyribonucleotide reduces cytokine production and the severity of collagen-induced arthritis by stimulation of adenosine A(₂A) receptor. Arthritis Rheum. 2011 Nov;63(11):3364-71.
3)A Bitto et al., Adenosine receptor stimulation by polynucleotides (PDRN) reduces inflammation in experimental periodontitis. J Clin Periodontol. 2013 Jan;40(1):26-32.

[執筆者]

船木 彩夏
化粧品メーカー研究員

[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」

<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士上級指導員
・健康管理能力検定1級
・日本化粧品検定 特級コスメコンシェルジュ

[監修]キレイ研究室編集部

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