骨盤を締めたら痩せるって本当?体幹ケアでバランスを取ることが大切です

骨盤ケア・・・骨盤をゆるめる、締めるなど、さまざまな言葉を見たり聞いたりすることって多いですよね。
体の中にある骨の中でも大きな骨である骨盤。
どんなケアができるの?
今回は、日本コアコンディショニング協会 副会長の石塚利光さまにお話を伺いました。

専門家から見た骨盤ケア、まずは知っておきたい「骨盤の役割」

雑誌やSNSでよく見かける「骨盤の歪み」や「産後ケア」「骨盤を締めて痩せる」などの言葉。
気にはなるけれど、「本当なの?」「何が正しいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
今回は、巷で言われているけど実際はどうなの?という骨盤にまつわる5つの疑問について、専門的な視点からお答えしていきます。
骨盤は体の中でも大きな骨格で、左右の寛骨と中央の仙骨の3つが組み合わさったものを一般的に「骨盤」と呼びます。
特に女性は、出産に備えて男性よりも大きく広がる傾向があります。
骨盤は身体の土台として、「お皿」のように臓器を下から支えたり、股関節を介して脚を動かす役割を持っていたりします。
そのため、健康・姿勢・動き、そして女性特有のライフイベント(妊娠・出産)に大きく関わるとても重要な存在なのです。
それでは、よく聞かれる疑問を5つ取り上げて解説していきましょう。

1:骨盤ゆがみ矯正って言うけど、どんな状態?

よく耳にする「骨盤の歪み」とは、寛骨と仙骨の位置関係や、骨盤を取り巻く筋肉のバランスが乱れている状態を指します。
通常の生活において、骨盤そのものが変形したり、大きく歪んだりすることはありません。
実際の施術では、骨そのものを直接動かすこともありますが、それは非常に細かい調整となるため、骨盤につく筋肉にアプローチすることと併用することが主です。
下半身と体幹部分を繋げている骨盤には大小さまざまな筋肉が付着しています。
それらが硬く縮んだり、弱く伸びたりすると、骨盤の一部にある一定方向へ引っ張るような力が加わることで「骨盤の歪み」が起こります。
そのようなケースでは、筋肉を緩めたり、筋肉の働きを高めることで筋肉のバランスを調整します。
また、転んだり、何かにぶつかったり、大きな力を出したりした時に、骨盤のズレが起こる場合もあります。その場合は、骨(関節)に対して力を加えることで、一気に矯正するような施術も行う場合もあります。

2:骨盤はそもそも歪まないともいうけど・・・?

整形外科的な観点では「骨盤は簡単には歪まない」と考えられることが多いです。
一方、整体やカイロプラクティックの領域では、数ミリ単位の動きを「歪み」と捉えることもあります。また、骨盤自体というよりも体全体のバランスの中で位置がずれている(歪んでいる)と説明される場合もあります。
なので、考え方により歪みの有無が変わってしまうのですが、重要なのは、「原因が特定できない慢性的な痛みや不調があるなら、その背景に体幹や姿勢の問題がある可能性が高い」ということ。
また、その歪みだけを整えて一時的に楽になっても、原因となる体幹深部の筋肉や体の使い方を変えなければ、痛みやケガを繰り返してしまいます。
その解決のために、体幹ケアが必要となるのです。

3:出産後、骨盤ベルトは必要?締める必要あるの?

出産を迎えるとき、女性の体はホルモンの影響で骨盤周辺の靭帯が一時的に緩む状態になります。
これにより、赤ちゃんが産道を通れるよう骨盤が開きやすくなるのです。
産後はそのままだと骨盤の関節が不安定で歪みやすいため、ベルトなどでサポートし、元の安定した関節の状態にて、インナーマッスルの回復を計りつつ、歪みのない安定した骨盤に近づけていくことが良い姿勢や運動機能を取り戻すうえで大切です。
そのため、必須ではなく、無理に締める必要もありません。
ですが、産後直後から1ヶ月から3ヶ月ほどを目安にベルトを使用しつつ、インナーマッスルを動かす意識をためることはおすすめです。
骨盤周囲の筋肉の回復に合わせて、ベルトなどに頼りながら、呼吸に合わせて骨盤底筋や腹横筋などのインナーマッスルを意識して使えるようにしておくといいでしょう。
産後3ヶ月を過ぎてからは、より積極的に体幹や骨盤まわりの筋肉に刺激が入る運動を取り入れて、大きくなる赤ちゃんを抱っこするなどの負荷がかかっても耐えられるようにしていくことが大切です。

4:骨盤を締めれば痩せる?!

残念ながら骨盤を締めるだけでは痩せません。
しかし、骨盤を整えることで全身のバランスが整い、姿勢がよくなることでスタイルがよく見えることは考えられます。
また、骨盤を安定させることで全身が動きやすくなり、動くこと、運動への意欲が高まることで、運動量を増やせる点ではダイエットの大きな助けになります。
なので、痩せるためには「動くこと」が必須であり、その土台づくりに骨盤のケアは有効です。

5:トレーニングで骨盤の形は変えられる?!

基本的にトレーニングをしても大人になってから、骨盤の形そのものを変えることはできません。
骨の形が変わるのは成長期までで、この時期は寛骨の「骨端線」と呼ばれる骨の隙間が開いているため、運動などの刺激によって成長が促されることがあります。
ただ、大人になってから骨盤自体の形は変わらなくても、周囲の筋肉を整え、動きやすさや姿勢の美しさを改善することは可能です。
そしてそれには体幹ケアや体幹トレーニングを取り入れるのが効果的です。

まとめ:体幹ケアでバランスを整えることが大切

骨盤にまつわる疑問にはさまざまな考え方がありますが、共通して大切なのは「骨盤まわりだけでなく、体全体のバランスを整えること」です。
体幹ケアによって姿勢や筋肉のバランスを整えれば、
・不調の予防
・産後の回復
・スタイル改善
といった女性の悩みの多くにアプローチできます。
「骨盤をどうにかしたい」と思ったときは、単に締める・矯正するのではなく、自分の体に合った体幹ケアを習慣にすることを意識してみてください。
それが、美しく健康な体を手に入れるための一番の近道です。
※セルフケアをおこなっていても痛みや不調が長期間続く場合は、医師などの専門家へご相談ください。

執筆者

石塚 利光
国内最大規模の運動指導者団体 日本コアコンディショニング協会 副会長
ペンシルベニア州立カルフォルニア大学大学院 修士号 / 元福岡大学教員

アメリカンフットボール USAチーム、プロバスケットチーム「名古屋ファイティングイーグルス」(Bリーグ)、プロ女子バレーボールチーム「クインシーズ刈谷」(Vリーグ)、空手形日本代表本 一将選手・・・など、トップアスリートへの指導実績多数
日本コアコンディショニング協会では副会長として運動指導者への指導やストレッチポール(R)などの体幹ケアツールの使用方法を監修。
また、株式会社LPN「アシスティック(R)」は元水泳日本代表トレーナー、現ウエイトリフティング日本代表トレーナーの桑井太陽氏と共同開発をおこなうなど、トレーニングアイテムの開発にも従事している。

体幹ケア
https://taikancare.com/

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