
痩せないのはどうして?栄養バランスに気をつけても痩せられない理由についてお教えします
「カロリーを全く気にせず、揚げ物もの甘いものも、何でも食べています!」
と言い切れる方は少ないのではないでしょうか。
ランチ用にコンビニでパンなどを買うときも、つい裏面の表示をチェックして、ランチで摂取するカロリーを計算したり、ファストフード店やカフェ、レストランでもメニューのカロリーを確認したり・・・。
あまりに高カロリーな食事が続いてしまうような場合だと、特に気になりますよね。
また、野菜や海藻、果物やたんぱく質の量など、栄養バランスを気にされている方も多いと思います。
「でも、それなのに痩せない・・・」
もし、そう悩んでいるのなら・・・あなたは、『あるもの』を食べ過ぎてしまっているのかもしれません。
UPF(Ultra-Processed Foods):超加工食品とは?
UPF(超加工食品)という言葉を聞いたことはありますか?
これは、通常の料理では使用されない成分(食品から抽出した成分や添加物)が用いられ、多数のプロセスを伴い製品化されるものを指します。
例えば、同じりんごを摂取する場合でも
A:皮をむいて切って食べる⇒工程はカットのみ
B:一般的な市販のジュース(果汁数%)を購入する⇒濃縮還元果汁(果物を搾汁・濃縮し保管や保存などを経て濃縮還元したもの)、酸化防止剤や甘味料、着色料やフレーバーなどを混ぜて製造と、ABではプロセスの数が全く違いますよね。
さらに、添加物はそれぞれ別に生産されるまでのプロセスを経ているので、細かくすると本当に多くの過程を経てつくられていることになります。
このような食品はUPF(超加工食品)と呼ばれています。
反対に、Aのように工程が少ないものはMPF(Minimally Processed Foods:最小加工食品)と呼ばれます。
お肉の場合だと、
A:煮る・焼く・蒸すなどのシンプルなプロセス⇒MPF
B:保存料や着色料などが使用された市販のハムやベーコン⇒UPF
になります。
UPFとMPFのイメージがついたと思います。
UPFを過剰に摂取すると痩せない・太るって本当?
2025年8月、MPF中心の食事を続けた人は、UPF中心の食事をした人よりも、2倍以上体重が減ったという報告がNature Medicineに掲載されました1)。
どちらの食事も、三大栄養素やビタミン・ミネラルなどの栄養バランスは、英国の政府機関が策定した「Eatwell Guide(厚生労働省による食事バランスガイドのようなもの)」2)に準拠した、バランスの良い食事でした。
この報告によると、MPF食を摂取した群は8週間で体重の2%減少したとのこと。
MPF食では、食欲のコントロールがしやすく、craving(欲求:空腹だから食べたいのではなく、チョコが食べたい、ハンバーガーが食べたいなど、特定の食品への高い欲求を指す)が抑えられ、それが体重減少につながったようです。
この試験においては、UPF摂取群でも1%ほど体重の減少が見られましたが、MPF摂取群では脂肪量が減少しているのに対し、UPF摂取群では筋肉や水分など除脂肪体重が減少しており、痩せた割合だけでなく、『脂肪減少』という観点から見てもMPF摂取群の方が優秀であるといえます。
ダイエットだけじゃない!健康にも影響を与えるUPF
UPFは、ダイエットだけでなく、健康にもさまざまな影響を与えることが報告されています。
UPFを多く摂取することにより、心血管疾患や2型糖尿病などのリスクを高め、全死亡率のリスクにも影響を与えることが報告されています3)。
また、わずか10%UPFの摂取量が増加することで、認知障害と脳卒中のリスクが高まるという報告もあります4)。
美容のためだけでなく、将来的な健康を考えても、あまり加工プロセスを経ていない、なるべくナチュラルな食品を摂取するよう心掛けた方がよさそうですね。
MPF中心の生活を送るコツ
MPFを多く摂取したいなら、なるべく食材の形の残ったもの、味付けのされていないものを選ぶのがコツです。
果物を食べるなら、ジュースやシャーベットではなくカットフルーツを。
お肉を食べるなら、ハンバーグやからあげ、メンチカツよりはステーキやしゃぶしゃぶを。
シリアルを食べるなら甘みたっぷりのグラノーラではなく、オートミールやコーンフレーク(無糖のもの)を。
味付けも市販のタレやドレッシングではなく、塩コショウやスパイス、オリーブオイルやごま油などを使うとよいでしょう。
でも、何かと忙しい現代人。
いくらMPFが良いと思っていても、調理が大変だったり、コストがかかったり・・・MPFだけを摂取しようとすると、手間や負担も大きくなってしまいます。
特に外食をするときなど、ナチュラルなものを選ぼうとするとコストもかかりがちに。
忙しいときに手軽に使用できる、加工済みの食品やレトルト、インスタント製品はとても便利ですし、ファストフードを食べたい気分のときもありますよね。
絶対にUPFを摂らないと決めるとかなり大変になりますので、
「週1日、でUPFを摂らない日をつくる」
「ジュースや清涼飲料水を止めて水やお茶を飲むようにする」
など、健康とのバランスを考えて、無理のない範囲で始めてみましょう。
[参考文献]
1)Samuel J. Dicken et al., Ultraprocessed or minimally processed diets following healthy dietary guidelines on weight and cardiometabolic health: a randomized, crossover trial. Nature Medicine, 2025
2)GOV.UK The Eatwell Guide:publishing.service.gov.uk: Eatwell guide colour edition
3)Melissa M Lane et al., Ultra-processed food exposure and adverse health outcomes: umbrella review of epidemiological meta-analyses. BMJ. 2024 Feb 28:384:e077310.
4)Andrew E. Budson, Ultra-processed foods? Just say no New research suggests that ultra-processed foods (UPFs) raise the risk of cognitive impairment and strokes. Harvard Health Online+, June 17, 2024
[執筆者]
船木 彩夏
化粧品メーカー研究員
[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」
<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士上級指導員
・健康管理能力検定1級
・日本化粧品検定 特級コスメコンシェルジュ
[監修]キレイ研究室編集部