新生活のはじまりなのに肌の調子がよくない。春に多いゆらぎ肌について皮膚科医鶴町先生にお伺いしました。
ようやく寒かった冬が終わり、春の温かさを感じるようになってきました。
陽気の中、気持ちも上向き、ワクワクしてくる季節ですが、なんだか肌の調子が不安定・・・??
今回は、そんな春の肌についてつくば・土浦鶴町皮膚科クリニック 副院長の鶴町宗大先生にお話を伺いました。
その不調・・・ゆらぎ肌が原因かも?!
春の肌の不調は、「ゆらぎ肌」が原因かもしれません。
ゆらぎ肌とは、温度・湿度の変化への適応が上手くできずに、肌のバリア機能が低下した結果、一時的に肌が過敏になっている状態のことです。
具体的には、
・肌のごわつき、かさつき
・肌の痒み
・スキンケアが合いにくい
・刺激感がいつもより強く感じる(肌のひりつき)
・吹き出物(ニキビ)が増える
などの症状が見られます。
ゆらぎ肌と敏感肌の違い
ゆらぎ肌と混同されやすいものとして、敏感肌という言葉があります。
これらの違いは、一般的に次のように考えられています。
ゆらぎ肌は、『一時的』な肌の過敏状態。
敏感肌は、『慢性的』な肌の過敏状態。
そのため、敏感肌は、特定の時期に限らず肌トラブルを認めやすい状況です。
そしてゆらぎ肌は、寒暖差や紫外線など、季節や肌環境の変化によって肌トラブルが起こしやすくなる状態です。
ゆらぎ肌の原因は?
なぜ、ゆらぎ肌になってしまうのでしょうか?
いくつかの原因が考えられます。
・紫外線による影響
紫外線(UV)は一年を通して肌にダメージを与えて、シミやシワ及びゆらぎ肌の原因につながります。
冬を終えて春を迎えると、紫外線が増加し、肌へのダメージも強くなります。
特に、紫外線の中でも肌の深部まで届きシワやたるみ形成に大きく関与する紫外線A波(UV-A)は5月6月がピークシーズンとされているので注意が必要です。
・花粉やほこり、大気汚染物質による影響
花粉やほこり、PM2.5などの大気汚染物質は、肌トラブルの原因となります。
特に春はスギやヒノキなどの代表的な花粉が多く飛散することが知られており、花粉の影響によりアレルギー反応が生じ、肌の赤みや痒みにつながることも指摘されております。
・季節の移り変わりに伴う気温の変化や乾燥
ゆらぎ肌の原因として、気温の変化や乾燥(湿度の変化)もあげられます。
その結果、肌のバリア機能低下につながります。
肌のバリア機能が低下している状態であると、肌が余計に乾燥しやすくなっており、ちょっとした刺激があるだけでも種々の肌トラブルにつながることが多くなります。
・不規則な生活習慣やストレス
食事内容や睡眠リズムの偏りなどにより生活習慣が乱れたり、疲労や心身のストレスが加わると自律神経のバランスが崩れやすくなります。
その結果、種々の肌トラブルにつながります。
特に、春は異動や転勤などの職場環境変化や、進学といった生活様式が大きく変化する時期ですので、注意が必要です。
ゆらぎ肌への対策1:適切なスキンケア
ゆらぎ肌の方は、低刺激性のものを使用することをおすすめします。
1)クレンジンング
クレンジングの目的は、メイクやほこり、皮脂などの肌の汚れを落とすことです。その時のポイントは、過度な摩擦を避けるために拭き取り用ではなく、洗い流し用のクレンジング剤を用いると良いでしょう。
この際、十分な量を用いて短時間で、メイク汚れとクレンジング剤をなじませてぬるま湯で洗い流すことが大切です。長時間のクレンジングは余計な皮脂まで落としてしまい更なる乾燥につながります。
2)洗顔
洗顔の目的は、過剰な皮脂や不必要な角層を取り除くことで肌を清潔に保つことです。その時のポイントは洗いすぎないことが大切です。洗いすぎてしまうことで、クレンジング剤と同様に余計な皮脂まで落としてしまい更なる乾燥につながります。
具体的には、ゴシゴシ擦らず、洗顔料を十分に泡立ててやさしく洗います。そして、洗い流す際には、たっぷりのぬるま湯で優しくすすぎ、肌への刺激を最小限にすることが大切です。この時に、生え際やフェイスラインのすすぎ残しには注意をしましょう。
3)保湿(化粧水、乳液、クリームなど)
洗顔により肌が清潔になった後は、化粧水を用いて肌に充分な水分を与えることが大切です。
この際、手などを用いて肌をパンパンと叩いてしまうこと(パッティング)で更なる肌の炎症を招く可能性があるので、やさしくていねいな保湿を心がけてください。
その後、浸透した化粧水の水分蒸発を抑えるために油分を含んでいる乳液やクリームを用いて下さい。化粧水の上からこれらを重ねることで、さらに保湿効果が高まります。
肌の乾燥対策として、十分な保湿を意識しましょう。
ゆらぎ肌への対策2:紫外線対策を忘れずに
基本的に紫外線対策は1年中必要となります。その中でも春から夏にかけては特に紫外線が強い季節ですので、注意が必要です。
また、曇りの日や雨の日においても紫外線は降り注いでいます。曇りや雨だからといって、紫外線対策をなおざりにしないように気を付けましょう。
また、窓などからも入ってきますので、屋内外を問わず紫外線対策を意識することが大切です。
次に日焼け止めを選ぶ際のポイントとして、ゆらぎ肌や敏感肌などの肌トラブルがある方は、肌に与える影響が少ない紫外線散乱剤(ノンケミカル)のものを選択すると良いです。
しかし、紫外線散乱剤が白浮きしやすいため、化粧の仕上がりに変化があることには留意が必要です。使用の目的とご自身の肌に合った日焼け止めを選びましょう。
皮膚科を受診すべきタイミング
スキンケアを適切に変更しても、ゆらぎ肌の症状がなかなか改善しない場合は、皮膚科を受診して適切な治療を受けることをお勧めします。
皮膚科では、適切な保湿剤や抗炎症作用のある外用剤、痒み等に対する内服薬などの処方が可能ですので症状改善を図ることができます。
ゆらぎ肌でお悩みの方は多くいらっしゃいます。
そのため、まずは季節にマッチしたスキンケアをおこない、肌の適切なバランス維持を目指しましょう。
それでも改善できない際には、皮膚科医にご相談いただければ幸いです。
[執筆者]
鶴町宗大先生
医療法人 鶴町会 理事
つくば・土浦鶴町皮膚科クリニック 副院長
[経歴]
獨協医科大学医学部卒業後、都内での初期研修を経て2018年4月に順天堂大学浦安病院 皮膚科教室に入局。
主に、アトピー性皮膚炎、乾癬、皮膚腫瘍などの一般皮膚科疾患などを診察し、皮膚科専門医を取得。
加えて、皮膚の加齢性変化に関して大学院にて研究をおこない医学博士を取得。
また、入局と同時期につくば・土浦鶴町皮膚科クリニックにて非常勤医師として勤務開始し、一般皮膚科のみならず、美容皮膚科診察も開始。
2023年4月よりにつくば・土浦鶴町皮膚科クリニックの副院長として常勤勤務を開始。
皮膚科・美容皮膚科を通じて、健康で美しい肌の実現を目指して、肌の悩みをトータルにサポートできるよう診療を行っている。
[保有資格・所属学会]
皮膚科専門医
医学博士
つくば・土浦鶴町皮膚科クリニック
https://tsurumachi.jp