若さへの執着が惨劇に?ヴァンパイア伝説とエイジングケアとの意外な接点|キレイ今昔物語

「いつまでも若くキレイなままでいたい」
これは古今東西、多くの人が抱いてきた永遠の願いです。
科学や医学が進歩した現代でも、スキンケアや美容医療や筋トレなど、さまざまな方法で人々は若さを保とうとしています。
歴史を見てみると、肌の白さを求めて鉛入りのおしろいを使ったり、水銀入りのスキンケア品が流行したり、ベラドンナ(猛毒)の目薬が目が潤んで綺麗に見えると広まったり・・・。
美しさのために命を削るような出来事はたくさんあります。
しかし、この「若さへの執着」が、想像を絶する惨劇を呼び起こしたこともあるのです。

若返るために何百人もの少女の血を求めたと言われるヴァンパイア伝説のモデルがいた?

16世紀に実在したハンガリーの貴族女性、エリザベート・バートリ(バートリ・エルジェーベト)。
彼女は後世、「血の伯爵夫人(Blood Countess)」として知られる存在となります。
エリザベート・バートリは、1570年頃から1600年代初頭にかけて、上流階級に生まれ育ち、広大な領地と権力を手にしていました。
彼女に嗜虐的な嗜好を教えたのは夫である伯爵のナーダシュディで、攫ってきた少女や使用人を折檻したり拷問したりしてエリザベートと楽しんだといわれています。
夫の死後、彼女の残虐性が増していく中、ある日、召使いの少女に罰を与えた際、跳ねた血が肌に触れたことをきっかけに「若い娘の血が肌を美しくする」と信じるようになります。
彼女の若さや美しさへの欲望は留まることを知らず、その後数百人の少女を攫って拷問して殺害し、その血を浴びることで若さを保とうとしたという恐ろしい伝説が語り継がれているのです。
若い女性の血を望むその執念があまりにも残酷で衝撃的だったため、バートリ伯爵夫人は、吸血鬼伝説のモデルになったともいわれています。
しかし、これらのエピソードは、後世創作や脚色がされている可能性が高く、政治的な陰謀によって、バートリ家の没落を狙い積みが誇張されたという説もあります。
しかし、彼女が多くの少女の命を奪ったのは事実と考えられており、彼女自身は捕縛され、生涯幽閉の処分を受けたとのこと。
ちなみに、バートリが残虐行為を重ねたとされるチェイテ城(現在はスロバキア領にある)は、観光名所となっているそうです。
近隣には博物館があったり、伯爵夫人のお祭りがあったりするそうなので、意外と人気があるのかも・・・?

若い娘の血に若返り効果がある・・・は、あながち嘘ではない?!

もちろん、現代を生きるみなさまは、化粧水のように血を肌に塗っても美容効果を得られないこと、感染症などリスクしかないことはご存じだと思いますので、バートリの所業は狂気でしかなく、滑稽に感じるかもしれません。
しかし、現代の科学によって、「若い血が細胞に与える影響」が報告されており、研究が進められています。
年老いたマウスに若いマウスの血液を与える(パラバイオーシスという臓器を共有しながらおこなう特殊な方法)と、筋肉や脳機能、臓器の修復力などに若返る効果が見られたとの報告があります(出典:Nature Aging volume 3, pages948–964 (2023))。
もちろん、すぐにヒトに置き換えて効果があるとすることはできませんし、FDA(アメリカ食品医薬品局)も倫理的な問題やそもそも効果の検証が不十分でリスクが伴うあるとして、警告を発表しています。
今後、どのような研究結果が報告されるか、ちょっと楽しみですね。
「若い血に若返り効果がある」という考え自体は、現代でも100%否定されてはいないといえるなんて、不思議な気もします。

若さを求める心は、古来から現代まで失われることなく、どの時代のどの人間にもあるでしょう。
他者を害したり、自身に危険が及ぶような手法は言語道断ですが、細胞の老化メカニズムの解明や、再生医療の進歩によって、誰しもが安全にアンチエイジングを求められる時代が来るのかもしれません。
化粧品を使った日々のスキンケアや、運動なども重要な要素のひとつ。
令和を生きる私たちは、安全でコスパやタイパのいい「キレイ」を目指したいですね。

[執筆者]

船木 彩夏
化粧品メーカー研究員

[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」

<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士上級指導員
・健康管理能力検定1級
・日本化粧品検定 特級コスメコンシェルジュ

[監修]キレイ研究室編集部

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