もう辛い思いをしたくない!花粉症を乗り切る方法について草ヶ谷医院院長草ヶ谷先生に伺いました!

そろそろ始まる花粉の季節・・・どう乗り切る?!
今回は、草ヶ谷医院 院長 草ヶ谷英樹先生に花粉症についてお話を伺いました。

鼻水やくしゃみだけじゃない!花粉症って、どんな症状が起こる?

スギやヒノキ花粉が飛ぶ季節になると始まるくしゃみや鼻水,鼻づまり。
日本人のおよそ4人に1人が苦しんでいる国民病である「花粉症」の季節が,今年もやってまいりました。
正確な医学用語は「季節性アレルギー性鼻炎」です。
花粉症の症状がとくに現れやすいのが鼻と目です。
鼻の三大症状はくしゃみ,鼻水,鼻づまりですが,これらの症状は風邪に似ています。
風邪であれば1週間程度で治るのに対し,花粉症は花粉が飛んでいる間は続くこと,さらさらとした水っぽい鼻水が流れること,発熱や強い倦怠感は伴わないといった違いがあります。
目の三大症状といわれるのが,目のかゆみや充血,涙です。
このほか,イライラする,喉や顔や首がかゆい,なんとなく息苦しい感じ,集中力が低下するといった全身症状を伴うこともあります。

なんで目や鼻がかゆくなるの?

スギ花粉が目や鼻にはいったときに少し涙ぐむ,1回くしゃみがでるだけでおさまるのであれば,これは体内に入ってきた花粉を取り除こうとする正常な免疫反応なのですが,ひどい鼻汁,くしゃみ,鼻詰まりや涙など,必要以上に過剰に起こる免疫反応がアレルギーです。
花粉のようなアレルギーの原因物質のことを,アレルゲンといいます。
花粉というアレルゲンが目や鼻から入ってきたことに体の免疫細胞(抗原提示細胞)が気づくと,まずはIgE抗体がつくられます。
このIgE抗体は各アレルゲン,つまりスギやひのきに対してくっつくことができる形をしています。
IgE抗体はアレルゲンに接触するたびにつくられるため,少しずつ体内に蓄積されていきます。

一方鼻の粘膜や目の周囲の粘膜には,肥満細胞という細胞がいます。
体内で出来上がったIgE抗体と肥満細胞がくっつくと,アレルギーの準備段階が整います。
これを感作といいます。

IgE抗体がくっついた肥満細胞に,スギやヒノキ花粉が近づくと,IgE抗体を橋渡しにして,アレルゲン-IgE-肥満細胞がくっつきあいます。
アレルゲンがくっついた刺激によって活性化された肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が分泌され、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった花粉症の症状を起こすのです。

『去年まではまったく大丈夫だったのに急に花粉症になってしまった』
という方もいるかもしれませんが、それはこれまで蓄積されていたIgE抗体が一定量に達して,肥満細胞が感作され,感作された肥満細胞にスギやヒノキがくっついた結果アレルギー反応がおこってしまったからなのです。

実は重症度がありって知ってる?

花粉症の重症度は,鼻水をかむ回数とくしゃみが生じる回数,鼻詰まりについては,口呼吸の回数で診断されます。

鼻水とくしゃみは密接に関係しているので,まとめて「鼻水・くしゃみ型」と分類し,鼻づまりが他の症状より強いと「鼻づまり型」に分類します。
すべての症状が同じくらい強いと「充全型」と分類します。

花粉症って治るの?治療について

花粉症の治療は,「薬物療法」,「アレルゲン免疫療法」,「手術療法」の3つに大きく分けられます。
症状の原因となる花粉から逃げるように生活環境をととのえることも,とても大事です。
薬物療法では鼻水を抑える抗ヒスタミンの飲み薬や,鼻の炎症をおさえる点鼻ステロイド薬,鼻づまりをよくする効果のあるロイコトリエン受容体拮抗薬などがつかわれます。
抗ヒスタミン薬は眠気などの副作用がありますが,最近はデザレックスやビラノアなど,眠気の出にくい薬もあります。
目の症状には,花粉をあびると出てくる化学伝達物質(ケミカルメディエーター)を抑える薬や,抗ヒスタミンの点眼薬がつかわれます。花粉の飛ぶ量が増えて症状がひどい場合には,目のアレルギー性炎症に対して点眼ステロイド薬を用いる場合もあります。
点眼ステロイド薬を使用する場合には,眼科専門医による定期的な検査が必要です。
アレルゲン免疫療法は,むかしは「減感作療法」と呼ばれていました。
原因となるアレルゲンをごく少量投与して体を慣らし,アレルギー反応を弱める治療です。注射と舌下製剤(舌の下にいれる)があり,日本ではスギ花粉とダニが保険適用になっています。治療は数年以上必要でなかなか根気のいる治療ですが,大きな効果が期待できます。
薬物療法で副作用が出るために治療が続けられない患者さんや,症状が抑えられないような患者さんでは,大事な治療の選択肢の一つです。
手術療法では,鼻の粘膜をレーザーで焼く治療方法があります。
耳鼻科専門医による評価が必要です。

治療は早く始めた方がいいって本当?

一般的に花粉症は,症状が悪化したあとでは薬の効果が小さくなります。
症状ができるだけ軽いうちか,出始め,あるいは症状がでる直前に薬を使い始める「初期療法」が有効です。
花粉症の症状が少しでもあらわれた時点で薬物治療を開始します。
花粉の飛散時期がわかれば,その1-2週間前から飲み始めるのもいい作戦です。
早めに薬をつかうことで,花粉の飛ぶ量が多くなった時期でも症状を軽くしやすくなり,気持ちよく花粉シーズンを送ることができます。

この時期の過ごし方

(1)花粉情報
花粉飛散時期にはインターネットやテレビで花粉の飛ぶ量の予測がでています。
事前に花粉情報を確認して,対策を立てましょう。
症状が強いひとは,必要なとき以外の外出は控えめにするのが安心です。
(2)花粉が多く飛びやすい日や時間帯は?
雨上がりは花粉が多くなります。
花粉は雨が降れば地面に落ちます。
そのため雨の日は飛ぶ量がへりますが,雨が上がった翌日は,山々など遠くから飛んでくる花粉に加えて,雨で地面に落ちたあと乾燥した花粉も巻き上げられるので,飛散する花粉はふえます。
一般に花粉は朝と夕方に多く飛ぶといわれています。
日の出から時間とともに気温が上昇していくにつれて,花粉も目や鼻の高さに浮遊しやすくなることや,夕方にかけて気温が下がってくると,今度は上空にあった花粉が降りてくるといわれています。
ちょうど通勤や通学時間に,顔のそばに花粉がいると考えるとわかりやすいです。
もちろん地域の地形や建造物などによって差はありますが,覚えておくとよいかもしれません。
(3)花粉から逃げるための服装は?
花粉は全身に付着します。
頭や髪の毛は帽子で防ぎましょう。
目や鼻はメガネやマスクで,首はマフラーや春先はスカーフで防いで,体にできるだけ直接花粉がつかないようにしましょう。
衣類は花粉が付きづらいような,できるだけ表面がツルツルしたものがよいです。
ウールや毛羽立った素材は,花粉がくっつきやすいので要注意です。
(4)帰宅時 帰宅後
家の中に花粉を持ち込まないように,玄関前で花粉を払いましょう。
すぐに着替えて外気に露出した顔などを洗い流しましょう。
この時期は症状の強い方は,洗濯物を屋内に干すのもおすすめです。

[執筆者]

草ヶ谷英樹
草ヶ谷医院 院長

先々代が静岡県清水市にて1950年(昭和25年)に開業した内科医院を、2021年に継承。
がん、アレルギー、感染症、免疫、環境関連など、多彩な病気を扱う呼吸器内科にひかれ勉強を始めました。
大学院で気道免疫の研究をすすめ学位を取得する中で、免疫反応やアレルギー疾患に興味をもち、現在は呼吸器内科・アレルギー科を専門に診療しています。
You TubeやSNSで病気の案内や吸入薬の使い方説明などをおこなっていますので、ぜひご覧ください!

Dr.草ヶ谷の呼吸器アレルギーnaviチャンネル
https://www.youtube.com/@kusagaya-clinic

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