日焼け止めについて正しく知っていますか?紫外線吸収剤と散乱剤、実はどっちも「吸収」しているんです。

日焼け止めを買う際には、SPFやPAなどの数値をチェックする方が多いと思います。
屋外でのレジャーを楽しむときはSPF50+のものを選んだり、日常生活で使うものとしてはSPF20~30程度のものを選んだり、目的によって工夫されている方も多いのではないでしょうか?
SPFなどの数値と一緒によく表示されていて目に入るのが「ノンケミカル」「紫外線吸収剤フリー」などといった言葉。
こう書かれると、それらの成分が入っていないものを選ぶべきなのか、迷ってしまいますよね。
紫外線から肌を守るために、日焼け止めには、一般的に「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」と呼ばれている成分が使われています。
今回は、大きく分けて、2種類ある紫外線防御剤と、それぞれの働きについてお話ししたいと思います。

有機系成分である紫外線吸収剤。ケミカル成分と呼ばれているけれど・・・


紫外線吸収剤は、いわゆる有機系の成分で、紫外線を吸収し、熱など体に害のないほかのエネルギーに変化させる作用を有しています。
肌に紫外線を吸収させたり、肌を黒く日焼けさせたりするためのものではありませんので、ご注意ください。
紫外線吸収剤にはたくさん種類がありますが、いくつか代表的なものをご紹介いたします。

○主にUVBを吸収するもの
・メトキシケイ皮酸エチルヘキシル
・オクトクリレン
・ジメチルPABAエチルヘキシル など

○主にUVAを吸収するもの
・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
・t-ブチルメトキシベンゾイルメタン など

○UVA・UVB両方吸収するもの
・オキシベンゾン-3
・メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール
・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン など

一部の紫外線吸収剤に関しては、2018年に珊瑚礁や海洋生物への影響が懸念され、ハワイなどではオキシベンゾン(オキシベンゾン-3)、オクチノキサート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)を含んだ日焼け止めの使用は禁止される法案が可決されました。
しかし、これは海洋環境保護を目的としたもので、人体への影響を想定したものではありません。
どちらも配合量に制限はありますが、規定された配合量の範囲内では安全性が確認されている成分であるともいえます。

実際、紫外線防御効果の高いメトキシケイヒ酸エチルヘキシルは、日本で最もポピュラーな紫外線吸収剤で、多くの日焼け止めやUV機能を有する化粧品に使用されています。
状況や使用部位、使用する場所などによって日焼け止めを選ぶのがおすすめです。

無機系成分、紫外線散乱剤。ノンケミカルタイプの日焼け止めとして人気に

紫外線散乱剤は無機系成分(ミネラル)を用いて紫外線を防ぐタイプの日焼け止め成分です。
これまでは紫外線を物理的に反射させたり、散乱させたりすることで紫外線から皮膚を防御すると考えられてきました。
しかし、可視光線は反射するものの酸化チタンや酸化亜鉛には紫外線を吸収すること、硫酸バリウムやタルクには吸収能がなくわずかに散乱させるのみと成分の違いについて報告されています(出典:Arch Dermatol. Feb;135(2):209-10. (1999))。
更に、その後の研究で、酸化チタンと酸化亜鉛は紫外線の4~5%ほどを反射・散乱させ、残りを吸収すること、粒子のサイズや結晶構造によって吸収能に大きな違いがあったことなどが報告されています(出典:Photodermatol Photoimmunol Photomed. Jan;32(1):5-10.2016)。
また、これらは可視光線も反射させる(白く明るく見せる)ため、紫外線を防御する目的だけでなく、顔料としてメイク品などにも使用されています。
紫外線散乱剤と呼ばれていても、可視光線と一部の紫外線を散乱させる働きと、多くの紫外線を吸収する働き、両方を有しているのですね。

紫外線吸収剤・散乱剤、どちらが肌にいいの?


巷ではいろいろいわれているようですが、吸収剤と散乱剤、どちらにもメリット・デメリットはあります。

・有機系成分(紫外線吸収剤)のメリット・デメリット
・仕上がりや使用感の良さ
紫外線吸収剤は、化粧品に配合しやすく、使用感もよく仕上がりも良い日焼け止めをつくりやすいという特徴を持っています。
使用感が軽く、塗っても肌が白くならないなどの特徴を有する日焼け止めに使用されていることが多い成分です。
・肌に合わない人もいる
まれに、紫外線吸収剤にアレルギーがある方がいます。

・無機系成分(紫外線散乱剤)のメリット・デメリット
・肌への刺激の少なさ
アレルギーを起こしにくいため、米国皮膚科学会では子どもや敏感肌の方には無機系成分を使用した日焼け止めの使用を勧めています。
幼児用やベビー用の日焼け止めにもよく用いられています。
・仕上がりや使用感
可視光を反射させ、肌を白くみせる作用があるため、白浮きしてしまうことがあります。
また、使用感も若干重めとなる傾向があります。

しかし、最近は原料メーカーや化粧品メーカーも工夫を重ね、吸収剤や散乱剤そのものを改良したり、処方化技術によってデメリットをなくしたり・・・と、上記メリット・デメリットも一概にはいえません。
また、両タイプの成分をうまく組み合わせることで、使用感も紫外線防御効果も高くなっている日焼け止めも市場には多く出回っています。

肌に合っているか
目的や使用場所(TPO)に合っているか
使用性(使用感や落としやすさなど)はどうか

など、さまざまな要素から、自分にとって一番良い日焼け止めを選ぶようにしましょう。
そして、どのような日焼け止めを使用した場合でも一番大切なのはその使い方です。
最近は伸びや塗り心地の良い日焼け止めが多いので、塗布時に薄く延ばし過ぎてしまい、塗布量が不足している方も見受けられます。
SPFを測定する試験では1㎠につき2mgの使用量が規定となっており、顔全体への塗布量で考えると、0.8g程度必要となります。
つまり、これより塗布量が少ないと、表示されたSPFどおりの紫外線防御効果が得られません。
各メーカーの推奨する使用量を守っていただければいいと思いますが、目安としては、クリーム状のものでパール2粒、液状のもので1円玉2枚分ほどとなります(出典:環境省 紫外線環境保護マニュアル2020)。
思ったより多いと感じられる方もいるかもしれませんね。
1度に塗ろうとするとムラになりやすいので、2度塗りをするなどの工夫をして、きっちり使用量を守りましょう。
また、いくらきちんと塗っていても、吸収剤タイプにしろ、散乱剤タイプにしろ、時間の経過によりどうしても紫外線防御効果は薄れてしまいます。
そのため、きちんと塗り直すことも大切です。
なるべく数時間に1度は塗り直すよう心がけましょう。
特に、汗をたくさんかいたときやタオルで拭いたときなどは、なるべく早めに塗り直しましょう。

どのような日焼け止めでも、正しい使い方をすることが、ずっと美肌でいることへの近道です。
自分に合った日焼け止めを正しく使い、紫外線から肌を守りましょう!

[文:キレイ研究室研究員 船木(化粧品メーカー研究員・サプリメントアドバイザー・健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級)]

関連記事一覧