まさか?!寝不足だと脳が自ら破壊を始める?!?

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「最近ちょっと寝不足で…」なんて言いながらあくびをすると、「だらしない!気合で乗り切れ」なんて言われることもあり、普段の生活の中では軽視されがちな『睡眠不足』。

ですが、睡眠不足というのは私たちから判断力や注意力を低下させ、重大な事故を引き起こす原因にもなりうるのです。

諸説ありますが、1986年にチェルノブイリで起こった原子力発電所の爆発事故や、スペースシャトルのチャレンジャー号の打ち上げ直後に起こった爆発事故なども、睡眠不足による人的ミスが原因で起こったと考えられています。

睡眠不足が原因と考えられる居眠り運転による交通事故も後を絶ちません。

『睡眠』というのは、私たちが生きていくうえでとても重要なもの。

もう一度、睡眠について考えてみませんか。

 

睡眠時間は脳のメンテナンス&クリーニングの時間

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私たちは、なぜ眠るのでしょうか?

1つ目は、心身を休息・回復させるため。

睡眠は、心身に休息をもたらし、細胞レベルでの修復をおこないます。

2つ目は、脳内の情報を整理するため。

脳内での記憶の整理や定着のため、重要な情報を海馬から大脳へ移行、神経回路のつながりを整理して、不要な情報を消去すると考えられています。

そして、今回ご紹介したいのが、3つ目の脳内のメンテナンス&クリーニングです。

米国ロチェスター大学のM.Nedergaard氏の研究チームにより、脳内の老廃物を処理するリンパ系のシステム(glymphatic systemと命名された)が睡眠中に働いているとの報告がありました(出典:Sci Transl Med. 2012 Aug 15; 4(147): 147ra111.)

現在はまだマウスでしか確認されていませんが、睡眠中は神経細胞の周囲の空間が広がってリンパ流れが増大し、日中起きている間よりも効率的に老廃物を脳外へと輩出しているそうです。

ヒトに対する臨床データとしては、睡眠の質が低い人ほど脳内に老廃物(アミロイドβ)の蓄積が多いという研究報告もあります。

単純に睡眠時間が多い方が良いのか、深く眠る必要があるのか、途中覚醒してしまうとどうなるのかなど、今後の報告が待たれるところです。

寝る子は育つといい、よく眠ると体が大きく育つというイメージを持たれている方も多いかと思いますが、しっかりとした睡眠を取ることは、身体の成長はもちろん、脳のメンテナンスにとっても重要なようです。

 

寝不足時の衝撃! 脳が自らを●●しちゃう?

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先ほど、睡眠中に脳内の情報を整理したり、老廃物を排出したりすると説明しましたが、実は睡眠不足が続くと、脳がとんでもないものを整理し始めてしまうということが、イタリアのマルケ工科大学の神経科学者であるM.Bellesi氏のチームによって報告されています(出典:J.Neurosci.2017 May24;37(21):5263-5273.)。

私たちの脳は情報処理と情報伝達を担う神経細胞(ニューロン)と、ニューロンの間を埋め、その働きをサポートしている神経膠細胞(グリア細胞)から成り立っています。

グリア細胞は、普段は古くなったり死んだりした細胞や、不要になったシナプス(ニューロンの接合部分)などを自らに取り込み、食作用 (ファゴサイトーシス。ギリシャ語の『phagein=食べる』が語源)に似た働きで脳の清掃や管理をしていることがわかりました。

しかし、慢性的な睡眠不足に陥ると、グリア細胞の一部が過度に活性化し、食作用が活発になり、不要でないシナプスまで文字通り『食べて』しまうことが報告されたのです!

普段はお部屋(脳内)をキレイにしてくれているお母さん(グリア細胞)が、あまりにも反抗的(休息してくれない=慢性的な睡眠不足)な態度にキレて、掃除に留まらず、必要なものまでどんどん捨て始めてしまうようなイメージでしょうか。

このとき、成熟したシナプスほど破壊の標的になるとのことなので、重要なものほど捨てられてしまう、ともいえるのかもしれません。

慢性の睡眠不足により、脳が自ら脳を食べて破壊してしまうなんて、怖いですよね!

また、M.Bellesi氏は、睡眠不足がもたらす脳への影響と、アルツハイマー病などの脳神経障害との関連についても明らかにしています。

こちらもマウスでの実験のみで、まだヒトの脳で同じことが起こるかどうかの確認はされていませんが、脳の機能を維持したいなら、寝不足、特に慢性的な睡眠不足は避けた方が良さそうですね。

 

日本人は、2014年のOECDの調査によって、世界一睡眠時間が短いと報告されています。

寝る間を惜しんで勉学に勤しむことや労働することは、日本では美徳と考えられることも多いですが、脳にとって『睡眠不足』は相当なストレス!

「眠気は気合や根性で何とかなる!」という考えは、この際改めましょう。

ただし、長すぎる睡眠は体内のリズムを狂わせるため、かえってよくないといわれています。

「平日は睡眠不足だ」という方も、休日は1~2時間程度の朝寝坊にとどめ、なるべく平日と同じ時間に起きる方が良いそうです。

個人差はあるものの、目安として成人で7~9時間程度の睡眠時間が良いとされていますが、朝起きたときに疲労感を感じず、昼間の活動に差し支えなければ、睡眠は足りているといわれています。

自分の体に合った適切な睡眠をとって、心も体もきちんと休息&メンテナンスしましょう!

(キレイ研究室 研究員:船木)

 

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